再生医療は、誰もが生まれながらにして持っている「自然治癒力」を利用した治療法です。その中で、すでに実際の治療に使われているものにPRP(多血小板血漿)療法があります。ここでは、自分の血液を利用するため安全性が高く、整形外科の分野でもスポーツ選手のケガやひじやひざの関節の痛みの治療などで使われているPRP療法についてご紹介します。
血小板が持つ成長因子を利用
自然治癒力を活かし、治癒を目指す
PRP(多血小板血漿)療法とは、自分の血液中に含まれる血小板の成長因子が持つ組織修復能力を利用し、私たちに本来備わっている「治る力」を高め、治癒を目指す再生医療です。

もともとは皮膚科の難治性皮膚潰瘍や褥瘡(床ずれ)、やけど、糖尿病の人の壊疽、歯科の歯槽骨や歯肉の再生促進に使われてきました。
海外では、2000年頃からサッカー選手やメジャーリーガー、プロゴルファーのケガの治療などにPRP療法が使われ、日本でも、それに数年遅れて整形外科分野でスポーツなどによる肘やひざの痛み、腱や筋肉の損傷などで、ステロイド剤を使わない新しい治療法として注目されてきました。

PRP療法は、現在のところ保険診療としては認められておらず、自由診療で行われています。また、自分の血液を使うことから、比較的安全性の高い再生医療と言えますが、2014年に施行された再生医療等の安全性確保等に関する法律(以下、再生医療法)の規制の枠組みに組み込まれ、再生医療を行うには実施施設(病院)は厚生労働省に届け出が義務付けられ、一定基準の安全性の確保が行われています。
PRP療法で改善促進が期待できる整形外科の治療分野
治療分野 治療の概要
脊椎固定術や骨折遷延治療における骨癒合促進 外科手術にて患部にPRPを使用
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)、アキレス腱炎、筋損傷の治療 PRPを注射器を用いて患部に注入。数日~数週間安静にした後にリハビリを行うなど
腱板縫合術や前十字靭帯再建術に補助的に用い、治癒促進 外科治療時に患部、再建組織にPRPを使用
変形性膝関節症、半月板損傷の治療で損傷組織の治癒促進 PRPを注射器を用いて患部に注入。数日~数週間安静にする
血小板の成長因子によって修復機能を高め、再生を促進
私たちの血液は、血球(赤血球・白血球・血小板)と血漿で構成されています。PRP(多血小板血漿)療法は、血液中に含まれる血小板や白血球などの体細胞の働きを利用する再生医療です。
血小板には、止血作用とともに、成長因子を放出して損傷部分を修復する働きがあります。血小板が放出する成長因子には、細胞増殖や血管の形成などに役立つものが数種類あります。それらが損傷部位に直接働きかけて細胞増殖を促進し、修復機能を高め、自然治癒力によってケガや病気を治療します。
血小板は、活性化すると様々な成長因子を放出する
PRP療法は安全性の高い再生治療
PRP療法は、これ以上分化して別の組織になることがない血液中の血球成分を、培養することなくそのまま使うため、安全性の高い再生治療だと言われています。
PRP療法の流れとしては、一般的には、患者さん自身の血液を採血し、遠心分離機にかけ、血液中にある血小板を含む多血小板血漿(PRP)を採り出し、患部に注射します。
ただし、現在、PRP療法は調製法の違いで様々な種類があり、患部への投与の仕方も目視で行う場合、超音波ガイドを用いて行う場合など、医療機関によって異なります。さらに、投与回数、投与間隔なども個別の症状や医師の判断によって異なります。
APS療法とは?
次世代PRPを⽤いたAPS療法って?PRPとは何が違うの?
次世代PRPと表されるAPSが国内でも治療で使⽤可能になりました(再生医療等の安全性確保等に関する法律に基づく届出済の施設のみ)。
APSはPRPから抗炎症成分など関節の健康に関わる成分を取り出したものです。PRPは主に筋・靭帯や腱などの組織修復を促すことが期待され、国内外での治療報告がありますが、APSは関節症治療への応⽤が期待されています。
膝関節内で炎症を引き起こすタンパク質(IL-1やTFN-αなどの炎症性サイトカイン)の活動を阻害することで、炎症を抑え、痛みを軽減するという仕組みです。欧州での臨床試験では、中程度までの変形性膝関節症において1回の注⼊で最大24ヶ月間に渡って痛みと機能改善が継続したと報告されています。
2018年8月より国に届出が受理された医療機関では治療(自由診療)が受けられるようになっています。関節症が進んで手術が対象となる症状には効果が期待し難いので、膝関節に違和感を持った際には早めに整形外科専⾨医にご自身の症状を相談し、早期に効果的な手を打つことで膝関節の健康寿命を延ばすことが可能となります。