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専門医インタビュー

関節痛のメカニズムとその治療戦略 ~保存療法、人工関節置換術、チーム医療によるリハビリ~

森戸 俊行 先生
  • 森戸 俊行 先生
  • 八王子ひがし整形外科 理事長
  • 042-645-2552
  • 昭島整形外科 院長
  • 042-542-2552

東京都

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医学博士、東京医科歯科大学 非常勤講師

この記事の目次

話題の再生医療で、消失した軟骨は甦るのか? 小さい欠損に対しては奏功しているものの、変形性関節症にはまだまだ難しく、さらなる研究が必要という段階です。治療とは、痛みの原因やメカニズムを知って、関節のケアを行うことです。ステージによっては、適切な筋力トレーニングやリハビリテーション、ヒアルロン酸注射などの保存療法が有効です。一方で痛みのない人生を送るためには、最終手段として手術を選択する勇気を持つことも必要になるかもしれません。今回はこのような観点から、八王子ひがし整形外科 理事長/昭島整形外科 院長・森戸俊行先生にお話を伺いました。

どうして膝が痛くなったり、変形したりするのでしょうか?

変形性膝関節症のレントゲン:内側の軟骨がすり減って消失しており、骨と骨がぶつかっている。

整形外科外来の患者さんの約4割は膝痛です。ほとんどの方がレントゲンを撮られて「骨が変形しています、変形性膝関節症です、一旦減った軟骨はもう治りません、これは年だからしようがないですね、とりあえず痛み止めや湿布で様子をみましょう」といわれると思います。でも、「年だから」で済まされては、患者さんはたまりません。痛みの原因をもう少し掘り下げて分析し、治療する必要があると考えています。
膝の場合、体重がかかる荷重軸は、真ん中の約1センチ内側を通っています。そこに体重の約75パーセントがかかるわけですから、X脚でもない限り通常は内側の軟骨が減っていきます。内側の軟骨がすり減っていくと、徐々にO脚になっていきます。O脚になればなるほど内側に体重がかかるため、軟骨の減少度合いがさらに加速していくというのが、変形性膝関節症の進行です。
当たり前のことですが、「痛む」ということは、そこに痛みを感じる神経があるということです。大腿骨と脛骨、その間に半月板があります。これらは全て軟骨で覆われています。半月板も軟骨と同じ組織です。軟骨には痛みの神経はなく、関節に加わる衝撃を吸収するクッションの役目を果たしています。その軟骨が摩耗すると炎症を起こし、痛みやこわばり、腫れを伴って関節の変形が進みます。
膝痛の分析を行う際には、画像診断によるステージ分類だけではなく、痛みの部位を特定することが重要です。痛みは具体的にどこにあるか。膝のお皿、腿の筋肉、膝蓋腱…、すべて押して圧痛点を探ります。

関節痛のメカニズムについて教えてください。

関節痛のメカニズム

関節痛は、久しぶりに山登りしたとか、病気で長く寝ていて筋力が落ちたというような、何らかのきっかけにより、関節を滑らかに動かす滑膜組織が炎症を起こすことから始まります。滑膜組織が炎症を起こすと、関節が硬くなり、曲げ伸ばしが低下します。また、痛みを伴いようになると、曲げ伸ばしをできる限り避けるようになり、関節はますます固くなります。その結果、痛みがさらに悪化するという「負の循環」が、関節痛には働いていると考えられます。
一方、このような炎症反応が起きると血管増殖が起きます。血管には「痛みの繊維」である神経がたくさん入っているため、神経組織の過敏性が出てきます。その相互作用で、痛みがもたらされて歩行能力が低下し、いわゆる跛行が起き、筋力低下などによりお尻を振って歩くようになったりします。このような状態になると全身のバランスが悪くなり、膝だけではなく、腰痛や肩こり、頭痛、歯茎痛など、様々な症状が誘発されてきます。
理想の関節は、曲げ伸ばしがきちんとできて、なおかつ安定してフラフラしない、痛みがなく、しっかりと体重をかけることができる関節といえるでしょう。


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