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専門医インタビュー

膝が痛くて畑仕事や家事がツライ! 自分に合った治療法を見つけ、充実した毎日を

長野県

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1971年生まれ。96年筑波大学卒。東京大学医学部整形外科教室、三井記念病院などを経て2009年から現職。 【認定資格】日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会専門医、日本体育協会公認スポーツドクター

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この記事の目次

年とともに衰える足腰。「年だから」「周りの人も同じようなものだから」と、痛みを我慢したり、痛みが出ないように活動を控えたりしている方はいらっしゃいませんか。「痛みは我慢せず、適切な治療を受けて、より充実した毎日を送りましょう」と森ロコモクリニック院長の森直哉先生は地域の方に呼びかけています。今日は、とりわけ膝の痛みで悩む方が多い「変形性膝関節症」の治療について、森先生にうかがいました。

「変形性膝関節症」とはどういう病気なのでしょうか。

膝関節は、ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)、お皿(膝蓋骨)の3つの骨からなる関節です。体の中で1番大きく、立ち上がる、歩く、座る―など日常生活でよく使い、負担がかかる関節です。その骨の間に、体重がかかったり、動かすときにクッションの役目をする軟骨があります。この軟骨が年齢とともに、あるいは、けがなどですり減ってくる―これが変形性膝関節症という病態です。

長野県の地域性はありますか。

寒冷地信州 女性は注意を

予備軍は全国で3000万人とも言われ、男性よりも女性に、都市部より山村部に多い傾向です。県内ではリンゴやブドウの栽培をはじめ農業が盛んで、従事している女性もたくさんいらっしゃいます。ですから、膝の痛みに耐えながら、毎日畑仕事や家事をこなしている女性も多いと思います。冬の寒さも厳しく、雪が降ると歩きにくいので、秋から冬にかけて症状が強くなる方もたくさんいらっしゃいます。

痛みを抑え、予防するには?

膝にかかる負担を抑えるために、太目の方は、少しでも体重を減らしてください。つえを使うのも効果的です。太ももの筋肉(大腿四頭筋)を鍛える運動や、ストレッチを日常的に行うことも大切です。

治療にはどのような方法があるのでしょうか。

初期段階では、痛み止めの薬(抗炎症鎮痛剤)を内服して関節の炎症を抑えます。関節の中にヒアルロン酸という潤滑液を注入する方法もあります。ただ、すり減った軟骨を元に戻すことはできません。これらの治療をかかりつけ医で半年、1年と続けても効果が見られない場合は、専門医に相談し、手術を含めたご自分に合った治療法を検討してみてください。

手術にはどんな種類があるのでしょうか。

より負担が少ない手術も

「関節鏡」と呼ばれる内視鏡を使い、傷ついた組織をクリーニングする「関節鏡手術」、すねの骨(脛骨)を切り、膝の角度を矯正する「高位脛骨骨切り術」、そして「人工膝関節置換術」があります。「人工膝関節置換術」は、痛みの原因となっているすり減った軟骨と傷んだ骨を切除して、金属やプラスチックでできた人工関節に置き換える手術です。最近では、より小さな傷口で手術ができますし、痛んでいる部分のみを置き換える「部分置換術」もあり、より負担が少ない手術法になっています。患者さまの症状の進行具合に合わせて適切な治療法を選んでいます。

人工関節の利点と注意点は?

体重をかけた際の痛みはほぼ解消されることが期待できます。変形によるO脚が真っすぐになるので、歩きやすくもなります。痛みなく安定した膝で日常生活を送れるようになることが目標です。ただ、どんな手術にも合併症の危険はあります。1~2%程度の確率でばい菌が入ってしまう感染症の恐れがあります。もちろん病院では十分な予防策を講じています。

手術を受けた患者さんの反応はいかがでしょうか。

「ピンピンコロリ」を目標に

痛みが想像以上に早く取れ、その効果に驚かれます。退院後「畑仕事が存分にできる」「どこにでも旅行できて楽しい」「孫と一緒に散歩もできた」といった喜びの声が数多く聞かれます。マレットゴルフやゲートボールなど軽い運動やスポーツを再開した方もたくさんいらっしゃいます。
自立した生活が営める期間(健康寿命)を延ばそうという考えが注目されています。長野県では「ピンピンコロリ」をスローガンに、「元気で長生きしよう」という運動も盛んです。
現在、介護が必要とされる原因の約4分の1が、関節の痛みや骨折とった整形外科領域の疾患によるものと言われています。そこで「整形外科を積極的に利用して健康寿命を延ばしましょう」と呼びかけています。膝の痛みがなく、自分の足で元気よく歩けることは、健康寿命を延ばす第一歩ですね。


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