専門医インタビュー
沖縄
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関節の痛みに悩まされていませんか?人間は老化やケガなどで関節の軟骨がすり減り、骨どうしがこすれて痛むようになります。脚の付け根(股関節)や膝に症状がある場合、「変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)」や「変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)」などの疑いがあります。股関節について、医療法人新整会じのん整形外科クリニックの新垣薫院長、膝について医療法人新整会じのん整形外科クリニックの池間康成先生に、それぞれの症状や治療法、人工関節のメリットについて聞きました。
沖縄タイムス(2014/11/25)より転載
新垣氏 人間の関節には衝撃を吸収するため、クッションの役割を果たす「軟骨」があります。変形性関節症は老化やケガなどで、軟骨が変性、摩耗し関節に痛みや腫れが生じる病気です。長引くと、関節が変形することもあります。変形性関節症はあらゆる関節で起こりますが、特に脚の付け根(股関節)や膝など、体重がかかる関節が多く、どなたでもかかる可能性があります。
池間氏 軟骨は神経がほとんど通っておらず、ぶつかっても痛くありません。軟骨がすり減ると、関節を動かすたび、神経が通っている骨と骨とがぶつかってしまい、痛みが出ます。
新垣氏 高齢になるにつれ筋力が弱くなり、関節の負担が大きくなるため、高齢の患者さんが多いです。関節を使い続け、軟骨がすり減ったことも関係していると考えられます。
しかし、スポーツ選手や重い荷物を運ぶ職業など、特定の関節を酷使した場合は、若くても発症するケースがあります。
池間氏 膝の場合は、軟骨の老化によることが多いです。また、遺伝や肥満、O脚など、様々な要因が関与しています。過去の骨折やじん帯損傷などのケガに起因することもあります。男女比は男性「1」に対し、女性は「4」と女性が多いのも特徴的です。
新垣氏・池間氏 車社会の沖縄は歩く習慣がなく、肥満の割合が多いといわれています。肥満は心臓や肺だけでなく、関節へも大きな負担をかけます。立ったり、歩いたりすると、膝や股関節に体重の5~10倍の負担がかかります。体重増加は、関節への負担が増すことになり、変形性関節症が進行しやすいといえます。
まずは、自分の体重で計算してみましょう。関節の負担がどのくらいなのか、実感できるかと思います。
新垣氏 股関節に繰り返す痛みがあると、変形性股関節症の疑いがあります。股関節の形態は遺伝するため、家族に股関節の病気がある人や子どものころ股関節の治療を受けた人は注意が必要です。初期は脚の付け根やおしり、膝の上部にこわばり、だるさなどの症状が現れます。中期にかけ、かがむことがきつくなります。坐骨神経痛や変形性膝関節症に症状が似ている場合もあります。進行期になると比較的早く関節が変形する場合があるため、早めの整形外科受診をおすすめします。
池間氏 膝も繰り返す痛みがあれば受診しましょう。変形性関節症に限らず、ほかの疾患にかかっていることも考えられます。変形性膝関節症だと、立ち上がりや歩き始めに痛みを感じることが特徴です。
新垣氏 股関節の場合、湿布、塗り薬、痛み止めの内服薬を用い安静にします。日常的に股関節の負担を少なくするため杖を使用し、階段の上り下りを避け、温熱療法や股関節周囲の筋力を強化する筋力トレーニングなど、まずは保存を目的とした方法を取ります。股関節に重度の変形があり、軟骨もほとんど無く、日常生活に支障が出る場合には、人工の金属製股関節に替える手術(置換手術)が行われます。置換術は満足度の高い手術ですが、人工関節の耐用年数が15~20年といわれ、若い人は再手術が必要となる可能性があります。若い人の場合は、関節の機能改善、関節を長持ちさせる目的で、関節形成術(骨切り術)を行うこともあります。
池間氏 膝は程度によりますが、初期であればヒアルロン酸の注射や運動療法などを行います。ふとももや膝の周りの筋肉を鍛えることが望ましいですが、適度に動かすだけでも膝の痛みを改善することができます。進行度によって手術を勧めるケースもあります。方法はO脚を矯正する手術(高位脛骨骨切り術)や、股関節と同様に人工関節の置換術があります。
新垣氏・池間氏 人工関節置換術は、傷んでいる関節の表面を削り、金属やプラスチック等の人工関節に置き換える手術です。関節の痛みがほとんどなくなるため、国内外で広く浸透している治療法です。
手術前にいろいろな検査を行い、患者さんの全身の状態を確認してから手術を行うかを総合的に判断します。主治医の説明をよく聞いて、分からないことや不安な点があれば相談してください。
新垣氏 手術後も人工関節への負担が大きなスポーツや重労働は避けたほうが良いでしょう。関節への負担を軽減し、人工関節の効果を長続きさせるためにも、筋力訓練は継続して行いましょう。
池間氏 膝の場合は、手術後は歩行訓練などのリハビリを含めて早い人だと通常2週間で退院、長い人でも4週間ほどで退院できます。
しかし、退院後も患部が腫れたり、熱っぽさを感じたりすることがあるので、自宅でのケアやリハビリの継続、外来でのチェックなどが必要です。痛みがなくなったからとご自身で判断なさらず、人工関節をより安全に長持ちさせるため、定期的に病院を受診して関節の状態を確認しましょう。
新垣氏 手術後に「もっと早く(人工関節置換術を)やっておけばよかった」「我慢しなくてもよかった」という方が多いですね。池間氏 手術をすると経過観察などで1人の患者さんと長くお付き合いすることになります。患者さんから「買い物にも行けるようになった」「旅行に行ってきた」と聞くと、手術をしてよかった、と思いますね。
関節に水が溜まるのは、軟骨がすり減り、関節内に炎症が起きているためです。炎症が落ち着くと自然に水も引きます。水が溜まった状態だと、膝や股関節を曲げにくくなり、痛みも持続するため、水を抜くことが多いです。
すり減ってしまった軟骨は元通りには戻りません。軟骨の再生については再生医療の分野で研究され、現在限局した軟骨損傷において特定施設でのみ行われていますが、変形性関節症に対してはまだ実用化されていません。
一般にサプリメントとして販売されているものは、その効果が医学的に証明されていないため、保険では認可されておらず、医師が積極的に勧めることはありません。
人工関節は特にばい菌に弱いと言われています。糖尿病の患者さんは化膿しやすいと言われているので、手術が可能かを事前に調べる必要があります。また虫歯の治療が必要な方は人工関節置換術の前に済ませておくことが理想的です。指輪、ピアス、ネックレスなどでかぶれる金属アレルギーがある方も、手術が可能かどうか相談してください。
ウォーキングは気分転換、血圧や血糖のコントロールにも効果的で、適度に行うことをお勧めします。手術をしていない方は、痛みが強くなる前に休憩し、ストレッチや体操などをして再開するのもいいでしょう。適度な運動は問題ありませんが、痛みを我慢してたくさん歩くとかえって症状が悪化するので、自分にあったウォーキングの距離、時間を考えることが大切です。手術後、腫れや熱がなければ歩くのは可能です。
有効なのは、浮力で体重の負荷がかからない水中での運動(水泳や水中ウォーキング)です。いすに座った状態や、床で横になって行う運動も、体重の負荷がかからないのでよいでしょう。
特別、軟骨に良い食事はありませんが、栄養バランスの良い献立をこころがけ、太りすぎないように気をつけましょう。直接関係はありませんが、年をかさねると軟骨だけではなく骨も弱くなるため骨粗しょう症予防のためにも、カルシウムは摂取するようにしましょう。
※1項目でも当てはまると、変形性関節症の可能性があります。整形外科専門医の診察を受けましょう。
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