専門医インタビュー
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年齢を重ねてくると、訴える人が多くなってくるのがひざの痛み。その原因のひとつが「変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)」と言われています。
日本では、変形性膝関節症の自覚症状がある人が約1,000万人、X線診断による患者数は約3,000万人※と推定されています。特に中高年の女性に多く、50代以降、患者さんの数が増えているようです。今後ますます進む高齢化社会にともない、変形性膝関節症も増加傾向にあります。
痛みからの解放、そして生活の質の向上のために、今回は座談会形式で3人の整形外科専門医にお話を伺いました。
※厚生労働省「平成20年介護予防の推進に向けた運動器疾患対策に関する検討会」より抜粋
巽Dr. 変形性膝関節症は、その多くが、加齢や肥満などが原因で、本来はひざの関節全体に均等にかかる力が局所に偏り、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)を覆っている軟骨がすり減ることにより発症する病気ですね。大腿骨(だいたいこつ)と脛骨(けいこつ)、それぞれをお茶碗だと思ってください。お茶碗とお茶碗が当たったら、割れたりひびが入ったりしますね。この病気の人のひざは、膝関節のクッションともいえる軟骨がすり減って骨と骨が何回も当たり、マイクロフラクチャーという小さな骨折を繰り返しているんです。
児玉Dr. 日本人に多い「O脚」も原因のひとつです。もともと50代以上の女性に多い病気ですが、最近は40代後半の方でも、長期間にわたる激しいスポーツなどでひざを使いすぎた結果、変形性膝関節症になる傾向があります。
巽Dr. 階段を下りるときや、歩き出しの痛みがひどくなったら注意が必要でしょう。
児玉Dr. O脚の人は、ご自分で「最近O脚がひどくなってきた」と感じる時期があるはずです。これも目安ですね。
金山Dr. ひざが痛いから友だちとの旅行を取りやめた、家族との買い物が億劫になったなど、日常生活で不自由が出てきたら、一度診察してもらってもいいかもしれませんね。
児玉Dr. 変形性膝関節症の治療は、まずひざへの負担を軽くしてあげること。たとえば、減量と筋力トレーニングです。
巽Dr. 大腿四頭筋(だいたいしとうきん)の訓練ですね。
金山Dr. 大腿四頭筋は基本中の基本で、実際にこれだけで楽になる方もたくさんいます。その筋トレと併行して、ヒアルロン酸(ひあるろんさん)の関節内注射などの薬物療法で進行を抑える方法もあります。
巽Dr. ただ残念ながら、一度すり減ってしまった軟骨が再生することはほとんどないんです。ですから痛みが治まらない人も中にはいると思います。注射でも痛みがとれない、頑張っているけれど体重が落ちない、筋肉もなかなかつかない、そのような人は次の段階の治療法である手術も選択肢のひとつと言えます。
児玉Dr. 患者さんのなかには、手術が嫌で痛みを我慢してしまっている人も少なくないように思えますね。もともと日本人はそういった気質が強いのかもしれません。
金山Dr. 日々痛みを感じながらも、自分の体にメスを入れたくはないという患者さんも多いかと思いますが、この場合「我慢は美徳」とは言えないかもしれませんね。
児玉Dr. 変形性膝関節症の外科的治療はいくつかあって、まずは関節鏡視下術(かんせつきょうしかじゅつ)。膝関節の中をカメラで覗きながら、軟骨などの損傷部分をきれいに取り除きます。
金山Dr. そして一般に「骨切り術」と呼ばれ、脛骨(けいこつ)を切ってひざの荷重(かじゅう)軸を矯正する「高位脛骨骨切り術」がありますが、2~3か月の治療期間が必要です。
その高位脛骨骨切り術と適応が非常に近い手術が「人工膝関節・部分置換術(以下、部分置換術)」ですね。骨切り術と比べて早期回復、社会復帰が期待できます。個人差はありますが、1週間から10日程度で動作が安定する患者さんが多いようです
巽Dr. O脚の方は、特に膝関節の内側が痛んでいる場合が多いんです。「部分置換術」は、その内側だけを人工関節にします。
児玉Dr. 虫歯のときに、悪くなったところを削って、そこにもともとの歯と同じ形をしている金属をかぶせますね?あれの大きなものを想像してください。人工関節は、大きな蝶つがいをひざ全体に入れると思われがちですが、骨の表面を削り、そこにかぶせ物をするというイメージです。
巽Dr. ただ実際には、痛みをとことん堪えてから来院する人が多い印象を受けますね。軟骨の一部がなくなった状態になると部分置換術。それを放っておくと、関節すべてを人工関節に置き換える人工膝関節・全置換術(以下、全置換術)ですね。
児玉Dr. 施設によっても異なるでしょうけれど、全置換術が約8割、部分置換術が約2割、といったところでしょうか。患者さんは痛みがひどくなってから来ますので、最初から全置換術というケースがまだまだ多いです。
金山Dr. 部分置換術は、全置換術と比べると、より小さな人工関節を使いますから、手術による切開が小さく、出血、骨を削る量や術後の腫れも少ない。これもひとつのMIS(最小侵襲手術)になりますね。
巽Dr. 加えて筋肉をまったく切りませんからね。自分の骨の多くの部分と、膝関節を支える4つの靱帯(じんたい)を温存できるのが特長です。全置換術と比べると、温存できる部分が多いんです。
金山Dr. ですから、より生体に近い動きができるということなんですね。もちろん、どの治療方法を選択するかは患者さんの症状、年齢や骨質などから、総合的に判断していきます。医師と相談しながら患者さん自身がよく理解された上で、最善の治療方法を選んでほしいですね。
巽Dr. 3か月ほどは無理せず、筋力をしっかりつけたいですね。
児玉Dr. なるべく元通りの生活に戻るのを心がけ、無理せずに歩きたいですね。筋力を維持することは本当に大切です。そして骨粗しょう症が進行しないような努力も忘れないでください。
金山Dr. 術後は「旅行にいけるようにな った」とよく耳にしますね。
児玉Dr. 海外に出かける人もいます。痛みがとれると気持ちも元気になり、外へ出かけたいと思うようになるのかもしれません。
巽Dr. そう、桜が咲いたら自分の足で歩いて桜を見に行く。そんな明日を目指してほしいですね。
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