メニュー

専門医インタビュー

整形外科医とリハビリの専門家が連携協力一人の患者さんを見守っていく

日向野 雅典 先生

東京都

プロフィールを見る

埼玉医科大学卒業、医学博士、日本整形外科学会専門医、義肢装具等適合判定医、日本整形外科学会スポーツ認定医、運動器リハビリテーション専門医

関連するキーワードから探す

この記事の目次


膝の痛みを訴える人が増えています。年だから、体重が重いから仕方がないと、あきらめて我慢していませんか? 「まず痛みを軽くしたら、次に必要なのが正しいリハビリ、そして動きを取り戻すために人工膝関節の力を借りるのもいい方法」と話す、日向野雅典先生に伺いました。

多くは変形性膝関節症、骨壊死の場合も

変形性膝関節症のレントゲン

変形性膝関節症のレントゲン

高齢者の膝の痛みの原因は変形性膝関節症による場合が多いのですが、なかには浮腫に伴う膝関節症や骨壊死で痛みがある患者さんが見受けられます。骨の浮腫は骨に過度の負荷がかかって骨が浮腫を起こし、骨圧が上がるために痛みが起こると言われています。骨壊死や骨の浮腫はレントゲンでは分からないので、MRIで確認すると、骨の中に変化がみられるのがわかります。
変形性膝関節症の多くの患者さんは、動き始めや歩行時、階段の昇降、特に降りる時に膝に痛みが走ります。しかし、夜間時痛が著明で、膝が痛くて眠れないと訴えてくる患者さんは、骨壊死や浮腫の可能性が高いでしょう。

痛みの改善が第一、そのうえで運動療法を

薬と併用して筋力アップのトレーニング

薬と併用して筋力アップのトレーニングを行います。

膝の痛みを改善するには、まず保存的治療から始めます。痛みが強い時には、無理に動かさないほうがいいと思います。痛いのを我慢して正座したり歩き続けたりしていると、他の部分が具合悪くなることもあります。
膝にかかる負担を少なくするために、歩行時には杖を用い、減量も大事です。昼も夜も痛みが続く場合は慢性疼痛になっている場合がありますから、それを抑えるような薬も併用しながら、内服薬、外用薬、ヒアルロン酸の注射などで痛みを和らげます。
たいていの患者さんは、私どもの病院に見える前に近くのクリニックで一通りの保存的治療を受けています。中には手術を覚悟して来られる方もいらっしゃいますが、そういう場合でも、3か月くらいは改めて当院での保存的治療を頑張ってもらいます。
痛みの改善が第一、そのうえで度合いに応じて筋力アップのトレーニングを行います。運動療法は保存的治療の中でも重要なものです。正しい方法で保存的治療、運動療法を行いながら、10人のうち9人は手術には至らずに、症状が落ち着き問題なく日常生活を送ることができるのです。

人工膝関節置換術を勧めるのはどんな場合ですか

人工膝関節置換術後のレントゲン

人工膝関節置換術後の
レントゲン

保存的治療を頑張っても、それでも痛みが取れない、膝の痛みのために狭まってしまった日常生活を取り戻したい、もっと自由に動きたいと望む人たちには、人工膝関節置換術を提案します。年齢とともに軟骨が損傷し、変形が進み、さらに体重の負荷などの要因も加わって変形した膝関節を、人工膝関節に取り換えて本来の状態に戻す手術です。人工膝関節置換術は、それぞれの患者さんの膝の状況と日常生活の環境に合わせて選択するもので、医師が無理に勧めるものではありません。本人の強い希望と家族の協力があって、はじめて行われるものです。
近年、人工関節そのものの性能が良くなっただけでなく、人工膝関節置換術の技術も飛躍的に進歩しています。今、日本国内で年間8 万例以上この手術が行われています。手術の目的は、痛みを取り去ること。私の患者さんにも、釣りが好きで、船に乗って釣りに行くのを楽しみにしていたけれど、膝が痛くて揺れる船に乗っているのがつらい、どうにかならないかと相談を受けて手術を決めた人や、あきらめていた友人との旅行にこれからも行きたいから、人工膝関節置換術を希望した人がいます。

早めの対応で部分置換も

人工膝関節置換術には、膝関節の一部分を人工のものに置き換える部分置換術と、関節全部を人工膝関節にする全置換術とがあります。全置換術の場合、膝関節の表面を全てきれいに削り取って、代わりに人工の膝関節に置き換えます。
部分置換術は、傷んでいる部分(主に関節の内側に当たるところ)だけを取り去り、そこに人工のものを入れますが、残っている骨やじん帯とのバランスをとって、狭い範囲で骨をうまくコントロールしなくていけません。膝関節全部を交換したほうがバランスの調節がしやすいので、全置換術を行う医師はたくさんいますが、部分置換術はどの施設でも行っているわけではありません。
でも、できれば患者さんの骨や筋肉にかかる侵襲は少ないほうがいいでしょう。当然、部分置換術の方が表面の傷や内部組織を切る範囲が少ないので、患者さんのためにもいいのではないかと思っています。しかし、症状が進んでしまってからでは、関節の一部分だけ取り換えるわけにはいかなくなりますから、早めに相談してください。私の経験では、部分置換術後に症状が進んで、さらに全置換術を行うに至った患者さんは今のところいません。


この記事の医師がいる
病院の詳細はこちら

ページの先頭へもどる

PageTop