専門医インタビュー
埼玉県
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膝が痛いから動くのが億劫、外出しなくなったらますます体重が増えた…。何とか治したいのだけれど手術は怖い、でも、このまま歩けなくなるのは困る…。と、悩んで、迷っているあなた。一度、整形外科専門医に相談してみませんか。「それぞれの状態に応じた治療法をアドバイスできる」と話す金子大毅先生に伺いました。
変形性膝関節症のレントゲン
中高年の膝の痛みの原因の中で、圧倒的に多いのは変形性膝関節症ですが、必ずしもそればかりではありません。例えば関節リウマチによる痛みや、骨壊死の場合もあります。骨壊死は、膝の骨の一部が壊死する状態のことです。つまずいたりなどのちょっとした外傷で起こることもありますが、痛みの出方が関節症とは少し違います。変形性膝関節症は運動時痛といって、じっとしている時は痛くないけれど動き始めや、階段を降りる時などに膝が痛くなります。骨壊死の場合は常に痛い、夜中寝ていてもシクシクと痛むのが特徴です。また、若いころに傷めたじん帯が原因で年齢とともに痛くなってくる場合もありますから、気になる膝痛は、まず整形外科を受診して原因を正しく調べてもらいましょう。
整形外科の専門医は、いつから痛いのか、どんな時に痛くなるのか、腫れてないかなどをチェックし、さらに必要に応じてレントゲンやMRIなどの画像診断を行います。
まず、痛み止め薬の服用、外用薬の使用、ヒアルロン酸の注射などの保存的治療から始めます。ヒアルロン酸は、体内にもある潤滑油的な働きをする物質。それを補うために直接膝関節に注射をして、関節内の炎症を沈め、痛みを和らげようというものです。痛み止め薬にもタイプの異なるいろいろな種類がありますから、それらを組み合わせて服用します。さらに、理学療法士が指導する運動療法や、管理栄養士による栄養指導も大事な治療です。肥満は、膝に過度の負担をかけますから、適正体重にもどすための食事指導は、痛みを軽くするためにも重要です。
ヒアルロン酸注射
膝関節がそれほど変形していない初期の段階なら、これらの保存治療だけで十分に痛みが取れます。月に一度のヒアルロン酸注射で、症状が落ち着いたという人もいます。
加齢とともに、軟骨は少しずつ減っていきますから、変形性膝関節症の症状も徐々に進行していきます。でも、初期の段階であれば、ヒアルロン酸の注射やダイエット、リハビリを含めた保存治療で進行を遅らせることもできるでしょう。
正常な脚(左)とO脚(右)
変形性膝関節症の最終手段ともいうべき治療法が人工膝関節置換術です。保存的治療を頑張っても痛みが取れない、ヒアルロン酸注射を5~6回行ってもあまり効果がないというのが、手術を考える目安になります。軟骨が減って関節が変形し、O脚が進むと痛みが強くなり、体重がかかる重心がずれてさらにO脚になるという悪循環に陥ります。
人工膝関節は、脛とももの骨それぞれの傷んだ膝関節表面をきれいに削り取って、代わりに人工の関節面を間に挟み込むという仕組みです。運動時に生じる関節面の痛みが取れて歩行が楽になるのが特徴です。
しかし、いくら画像上で関節の変形が進んでいても、手術は本人が希望して行うものです。術後のリハビリなども本人が納得して行なうことでよりよい機能回復につながります。これから先、痛みのためにいろんなことを我慢し、制限しなくてはならない生活を送るのではなく、もっと自由に動きたい、今まで通り旅行にも行きたいし、軽い運動などもしたいという思いに応えるものだと思っています。
人工関節全置換術の模型
手術は、出来るだけ患者さんの負担にならない方法で行うようにしています。人工膝関節置換術を行う患者さんそれぞれの状態が違うわけですから、全置換で行う方や、全置換でも両十字じん帯を温存できるという新しい方法で行える方や、部分置換のみですむ方もいらっしゃいます。このように人工関節置換術には、いろいろなやり方があるのです。患者さんそれぞれの状態に適した選択肢をたくさん持っているというのは大事だと思いますね。
全置換、部分置換、いずれにしても心がけているのはMIS(最小侵襲手術)。表面の傷、見た目の傷を小さくすればいいというのではなく、内部の組織、筋肉靭帯などもできるだけ傷つけないで行う手術法が基本です。
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