専門医インタビュー
変形性膝関節症は進行する病気で、最終的な治療法として人工関節があります。手術を受ける人は多くなっているとはいえ、まだ抵抗感のある人もいる人工関節について、北濱先生は「虫歯に金歯をかぶせるのと同じ」と話します。人工関節を中心に変形性膝関節症の治療について伺いました。
膝の痛みの原因には、スポーツ等での外傷や使いすぎといったオーバーユースやリウマチや痛風等の病気によるものもあります。特に、近年、高齢社会の到来によって増加の一途をたどっているのが、加齢による変形性膝関節症です。変形性膝関節症とは、年をとるにつれて膝の軟骨が磨耗し、歩行や立ち座りに支障を来たす疾患です。
以前はレントゲンで膝関節の軟骨が擦りきれ、関節の隙間がなくなる状態になって初めて医師も患者さんも、変形性膝関節症と認識していました。ところが、現在は、MRIで関節内の半月板と呼ばれるクッションの劣化具合や軟骨の磨耗具合が見えるようになってきたことから、ごく早期の段階から変形性膝関節症の症状をとらえることが可能になっています。そのため、変形性膝関節症という疾患の概念も治療のバリエーションも広がってきています。
40代から50代で膝の痛みを自覚し始める方がいます。膝に負担のかかる仕事やスポーツでの無理がたたったり、「軽くつまずいた」とか、「階段で踏み込んだ」といった動作で発症することも多いようです。あるいは、体重過多のツケがいよいよ回ってきて、膝が悲鳴をあげ始めたという場合もあります。
ただし、この時点では、レントゲン撮影では特に異常が見られないことも多いのです。
ところが、この時点でもMRIを撮れば、レントゲンには写らない「半月板の変性損傷」や「骨髄浮腫」などが確認できることがあります。これらも大きく捉えると変形性膝関節症につながる前段階と考えられます。
変形性膝関節症のレントゲン(内側の隙間がなくなっています)
湿布や塗り薬等の外用剤、消炎沈痛剤等の投薬、関節注射、体重コントロール、筋力強化などの積極的なリハビリがまず必要となります。こうした保存療法で大部分の方は症状がかなり改善します。
しかし、気をつけなければならないのは、これは変形性膝関節症という病態の前段階が過ぎただけで、すでに劣化し始めた半月板や軟骨の変性の進行が止まったわけではないということです。保存療法によって膝の痛み自体は、おおよそ1か月から数か月で改善することが多いものの、その後もしずかに膝関節内の劣化は進行し、数年から十数年後には、再び膝の痛みで歩行に支障を来たすことが多いのです。この時点でレントゲンを撮ると、多くは、内側の膝関節が潰れた典型的な変形性膝関節症が確認できます。私の印象では、この段階での保存療法は鳴かず飛ばずのことが多く、痛みや歩行困難で人生を浪費してしまう方が多いように感じています。
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