専門医インタビュー
長野県
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膝だけでなく、太ももの付け根(股関節)まで痛いという人は少なくありません。股関節から膝と下肢全体をトータルで診察し、人工関節置換術を中心に高度な手術手技や術前計画などによって患者さんのQOL 向上に取り組んでいる丸の内病院の縄田昌司先生に、膝と股関節の変形性関節症の手術について伺いました。
股関節と膝関節の不安定性
股関節(足の付け根)にしても膝にしても、一番多いのは、変形性関節症による痛みです。変形性関節症は、関節でクッションのような役割をする軟骨がすり減って、関節そのものが変形してくる病気です。股関節、膝関節で変形性関節症を発症すると、足の付け根のあたりから膝にかけて痛みを感じたり、歩きづらくなってきたりします。
股関節、膝関節といった下肢の変形性関節症の最も大きな要因の一つに、「不安定性」があると考えています。不安定性というのは、文字通り、関節が安定していない状態。股関節、膝関節には、本来、正しい荷重ポジションがあります。それが、様々な要因で変わってしまうと、関節の動きが不安定になり、変形を引き起こすことがあるのです。
膝の構造
膝については、例えば、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)がグラグラしないようにつないでいる「靭帯」をちょっとしたケガなどで損傷したり、もともと構造的に靭帯の機能が完全でなかったりすると不安定になってきます。もちろん原因はそれだけでなく、軟骨そのものがもろくて弱いとか、不安定性を引き起こす骨格的な特徴があるとか、あるいは明らかに遺伝といっていいものもあります。膝の場合は、そうした様々な要因で不安定性が引き起こされ、変形性膝関節症を発症すると考えられます。
臼蓋形成不全
股関節については、変形性股関節症を発症した年齢で、不安定性が引き起こされている原因が違うと考えています。
比較的若くして変形性股関節症を発症した人は、子供の頃から股関節の屋根の部分のかぶりが浅い臼蓋形成不全があることが多く、股関節のかぶりが浅いと、それだけ股関節は安定しなくなります。
一方、ある程度高齢になってから変形性股関節症を発症した人で多いのは、腰が曲がり、骨盤の角度が変わってしまうことで股関節の不安定性が引き起こされているケースです。腰が曲がる原因は、主に骨粗しょう症や腰椎の変形性脊椎症、加齢によって脊椎が柔軟に動きにくくなることで、変形性股関節症を発症すると考えられます。
以前は、変形性股関節症の9割は、子供の頃からの臼蓋形成不全が原因になっているといわれていました。しかし、現在は、加齢や病気で腰が曲がってしまうことで引き起こされている変形性股関節症は1割どころではなく、もっと多いと感じています。
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