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専門医インタビュー

なりたい自分と生活にあわせた膝の治療選択を

裵 漢成 先生

愛知県

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専門分野:整形外科一般、スポーツ整形外科、関節外科
日本整形外科学会専門医、日本手外科学会、日本整形外科学会、日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS)、日本体育協会公認スポーツドクター、日本人工関節学会、日本リハビリテーション医学会、東海イリザロフ創外固定法研究会世話人、日本 Knee Osteotomy フォーラム世話人、AO Trauma Japan 上級会員

この記事の目次

中高年期以降の膝の痛みの原因の大半は、変形性膝関節症です。近年、変形性膝関節症治療の最終手段としては人工膝関節置換術が一般的ですが、裵先生は、「その前に、正しい体の使い方や筋力トレーニング、骨切り術など、症状を改善するために他にできることがある人は少なくない」と話します。筋肉の重要性とともに、人工膝関節、骨切り術を含めた手術療法について伺いました。

膝の痛みをがまんし続けると、弊害はありますか?

最近のデータ(円グラフ)

中高年期以降、特に気をつけていただきたいのが、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)です。ロコモとは、骨や筋肉の衰えによって、歩く、立つといった移動機能が低下した状態のこと。そのまま足腰が弱くなり、自分で立てなくなると、やがて寝たきりになってしまう恐れがあります。多くの人は、平均寿命と健康寿命(健康で日常生活を送れる期間のこと)にはギャップがあります。最近のデータ(※)によると、要支援・要介護状態になる期間は、男性で約9年、女性で約12年。要支援・要介護になった原因の約25%が骨折や転倒など運動器の障害によるもので、そのうちの約8%が膝の疾患です。つまり、膝に痛みや可動域制限(動きにくさ)などがあれば、立つ、歩くといった動作のバランスが悪くなり、転倒したら骨折してしまう恐れがあります。健康を維持していくには、膝の痛みを放置せず、専門医の指導のもとで、適切な治療やケアを行うことが重要だと思います。

膝の痛みにはどのような治療やケアが必要でしょうか?

変形性膝関節症のレントゲン

変形性膝関節症のレントゲン

中高年期以降の膝の疾患で最も多いのは、変形性膝関節症です。変形性膝関節症は、加齢や肥満などを原因として膝関節の軟骨が傷むことで起こります。進行度によって保存療法、手術療法と治療法がいくつかある中で、私が特に重要視しているのが運動療法です。当院で手術を受けるために受診された患者さんに簡単な運動のやり方をアドバイスし、実践してもらったところ、3分の1くらいの人で痛みの改善がみられました。
なぜこのようなことがあるのかというと、私たちは、普段の生活の中で知らず知らずのうちに正しい体の使い方を忘れてしまい、体のバランスが崩れてしまっているからです。その状態では、いくら運動をしても効率が悪く、かえって傷めてしまいます。
そのような人ほど、筋肉の正しい使い方をアドバイスすると、手術自体が必要なくなるか、あるいは、手術をしたとしても術後の経過が良好で患者さん自身の満足度が高いことが多いのです。

筋力が重要なのですね

軽い運動のイラスト

軽い運動でも追い込めば効果
があります。

「安静は麻薬、運動は万能薬」とおっしゃる整形外科の先生がいます。まさにその通りだと思います。安静にしているとらくちんで、気持ちよいと本人のみならず周囲の人間も思いがちですが、そこに落とし穴があります。安静にしていると本人も周囲の人もラクに感じてしまいますが、寝たきりの状態になると1日に0.5%ずつ筋肉量が減少し、骨密度も下がり、精神状態も悪化すると言われ、さらに血管機能、内分泌、循環器などにも障害が起き、全身状態の悪化をまねきます。ところが、運動を行うと、筋肉から健康増進に働く化学物質が分泌され、その化学物質は、脂肪の取り込みを改善し、血管の柔軟性を上げ、認知症の予防にも有効に働くことがわかり始めています。まさに運動は万能薬だと思います。
運動といっても、以前は、筋肉をつけるにはかなり負荷の高い運動が必要だといわれていましたが、最近の研究では、軽い運動でも疲労を感じるほど自分を追い込んで行えば、筋力がつくといわれています。年齢を重ねても、筋力をつける運動を行うことはとても重要だと思います。


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