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専門医インタビュー

健康寿命を延ばすためにも専門医とよく相談し適切な治療を適切なタイミングで受けましょう

平井 直文 先生

京都府

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専門分野:膝の外科
認定資格:日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会スポーツ医

この記事の目次

超高齢社会を迎え、日本人の平均寿命はますます延びています。しかし、肝心なのは介護などを受けずに自立した生活が送れる健康寿命を延ばすことではないでしょうか。「膝が痛くて歩かないようになると家に引きこもりがちになり、気持ちが落ち込んでしまう人も少なくありません。膝の痛みが改善して活動性が上がれば、精神的にも肉体的にも健康で過ごせる期間が長くなる可能性がありますよ」とアドバイスする平井直文先生にお話を伺いました。

高齢者の膝の痛みの主な原因は何ですか?

正常な膝と変形性膝関節症

原因として多いのは「変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)」で、高齢者で膝の痛みを訴える人の約80%を占めています。これは、膝関節にあるクッションの役目を果たす軟骨が年齢と共にすり減り、軟骨の下にある軟骨下骨(なんこつかこつ)が直接こすれるようになって痛みを生じる疾患です。加齢による退行性変化が主な原因ですが、過体重やホルモンバランスの変化も影響していると考えられます。違和感や痛みといった症状が出てくるのは、多くの場合60歳以降です。

どのような症状があれば整形外科を受診すればいいのでしょう?

椅子から立ち上がる時に痛い

日常生活動作(ADL)が以前に比べて低下することが一つの目安となるでしょう。例えば正座がしづらくなったり、階段を両脚そろえて一段ずつ昇り降りするようになった時は、整形外科を受診することをお勧めします。初期の段階では「椅子から立ち上がる時に痛い」「階段の昇降時に痛い」という程度であっても、我慢して放置していると、「じっとしていても痛い」「平地を歩く時も痛い」など、症状が進行してしまうこともあります。また、変形性膝関節症以外の病気が隠れていることも考えられます。症状のある人は早めの受診を心がけてください。レントゲン検査では異常がみられなくても、MRI検査で軟骨や半月板(はんげつばん)の損傷や軟骨下骨の中の出血や炎症が見つかることもあります。適切な検査を受けて、膝の状態を正しく診断してもらうことが大切です。

変形性膝関節症はどのような治療から始めるのでしょう?

まずはリハビリ(運動療法)で膝周囲の筋肉を強化することから始めます。特に大腿四頭筋(だいたいしとうきん)(太ももの前側の筋肉)を鍛えるのが効果的で、柔軟性を高めるためのふくらはぎのストレッチなどとバランスよく行えば、膝にかかる負担の軽減や、痛みの改善が期待できます。手軽なトレーニング法としては、椅子に座り、つま先を立てた状態で膝を水平に伸ばし、片脚ずつ5秒~10秒静止してゆっくりと下ろします。この運動を両脚で20回を1セットにして朝・晩に継続して行うと効果的です。寝た状態で膝を床に押し付けるようにする運動も大腿四頭筋強化の効果があります。ふくらはぎのストレッチは、寝た状態でつま先を頭の方に向けてゆっくり曲げ、次に反対方向にも曲げます。どの運動も簡単で膝に負担がかかりませんので、日常生活の中で習慣づけるといいでしょう。こういったリハビリだけで症状が改善する人も少なくありませんよ。

リハビリ以外にも効果的な治療法はありますか?

関節内へのヒアルロン酸注射

関節内へのヒアルロン酸注射

症状に応じて、痛み止めなどの薬物療法や足底板(そくていばん)などの装具療法、関節内へのヒアルロン酸注射などを行います。ヒアルロン酸注射は1週間もしくは2週間に1回、5回続けて打ち、経過を見ます。個人差はありますが、数カ月~数年痛みが軽減する人もいます。
しかし、こういった保存療法を3カ月以上行っても症状の改善が見られず、日常生活動作に支障をきたすようであれば、手術という選択肢もあることをお話するようにしています。


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