専門医インタビュー
神奈川県
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長寿命化が進み、70代、80代になっても活動的な方が多い今日。一方、加齢に伴って膝や股関節の痛みに悩む方が増えています。「長生きをすればそうした症状が出てくるのはある意味で自然なこと。痛みに気づかないふりをするのではなく、しっかりと向き合うことが大切です」とアドバイスする日本医科大学武蔵小杉病院の渡部 寛先生に、関節痛のさまざまな治療法について詳しくお話を伺いました。
膝や股関節は、日常生活動作(ADL)に欠かせない役割を担っています。股関節や膝の痛みが強くなると、靴下の着脱や、浴槽に入る、椅子に深く腰掛けるといった動作が困難になってきたり、屋外に出て歩くのが痛くてつらいので、外出が億劫になり閉じこもり気味になるようです(活動性の低下)。
最近では、膝と股関節の関連性にも注目されています。膝の痛みが続くうちにおしりの筋肉が落ちてきたり、股関節の痛みを患ううちに徐々に太ももの筋肉が弱くなるなど、筋力的にも密接なつながりがあったり、痛みのある左膝をかばって歩くことで、反対側の右の股関節が痛くなるといったことも珍しくありません。結果的には、膝・股関節・腰・足関節といったさまざまな箇所で痛みが連鎖し徐々に変形が進んで、加齢性の変化が進んでいくこともよく見られます。
変形性股関節症
変形性膝関節症
膝が傷む原因にはさまざまな疾患がありますが、高齢者の場合、最も多いのは軟骨がすり減って骨の変形が進む変形性膝関節症で、全体の多くを占めます。そのほか自己免役疾患(じこめんえきしっかん)であるリウマチや、骨の一部が壊死(えし)してしまう骨壊死もしばしば見られるケースです。
同様に股関節も、変形性股関節症が大多数を占め、それ以外のものとしてリウマチや大腿骨頭壊死(だいたいこっとうえし)が挙げられます。また、日本人には寛骨臼形成不全(かんこつきゅうけいせいふぜん)が多いのも特徴です。これは、骨盤にある大腿骨頭の受け皿となる臼蓋(きゅうがい)のかぶりがもともと浅く、股関節が不安定な状態なので、人によっては10~20代から痛みが出てきます。一方で、若い時には平気だったものの、加齢により寛骨臼形成不全が変形性股関節症へと移行し、50~60代になって痛みに悩まされるようになるのも非常に多いケースです。
痛みが続くと活動量が減り筋力が落ち、体重が増えると関節に負担がかかるのでさらに痛みが増すという悪循環に陥ってしまいます。そのため、関節にかかる負荷を減らすために、減量や筋力トレーニングに取り組んでいきます。特に膝に関しては体重コントロールが極めて重要で、体重が減るとそれだけで痛みが和らぐ方もいます。カロリー過多にならないよう食べる量をコントロールし、月1kgのペースでもいいので減量に努めてください。また理学療法士の指導のもとで運動療法を行い、関節をサポートする筋力を高めることでも関節にかかる負担を軽減できます。
そのほか、痛みや炎症を抑える薬の服用や、膝の場合は、ヒアルロン酸の関節内注射も有効です。特に高齢になってくると、内服薬では副作用が強く出る可能性があるため、副作用が少ないヒアルロン酸注射が多く選ばれています。
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