専門医インタビュー
静岡県
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膝が痛くなる原因は年代に関わらずさまざまあります。特に高齢の方では、変形性膝関節症が最も多いのですが、治療方法が進歩してきており、ご自身が望まれる生活などをもとに治療方法が選択できるようになっています。新都市病院 院長の坂田 悟先生に変形性膝関節症だけでなく、膝が痛くなるいろいろな原因や治療法、日常生活での工夫についてうかがいました。
世代などで違いがありますが、若年者の場合、運動やスポーツを行っている時のケガなど外傷によって、膝の靭帯や半月板が損傷することがあります。また、まだ発育途中の方の骨の端には、成長軟骨と呼ばれる成長をつかさどる軟骨層(骨端線(こったんせん))があり、スポーツや交通事故などで強い力が加わることによって骨端線を損傷し痛みが生じる場合があります。その他、原因不明で関節の炎症が数週間以上続く若年性特発性関節炎という病気など膝が痛くなる原因はさまざまです。
高齢者の場合、関節が炎症を起こし軟骨や骨が破壊されて関節の機能が損なわれ関節が変形してしまう関節リウマチや、長い年月にわたって膝を酷使してきたことなどが原因で、膝の軟骨が摩耗し骨が変形する変形性膝関節症が代表的な痛みの原因です。
まず治療を受ける前に、ご自身の痛みの原因が何かを知り、それにはどのような治療法があり、どの治療を選択すればご自身に適切かを医師と一緒に考えることが大切です。変形性膝関節症の治療には、痛み止めの内服や関節の動きを良くしたり痛みを軽減するヒアルロン酸を関節内に注射したり、筋力トレーニングやストレッチといったリハビリテーションなど保存療法と呼ばれる治療があります。特に膝を曲げる伸ばす時に使う大腿四頭筋やハムストリングを鍛えると、膝が安定化し痛みが軽減することもあります。その他に足底板(そくていばん)と言って靴の中に治療用の中敷きを入れ、膝に負担がかかる場所を変えることで痛みを軽減する方法や、杖やサポーターなどの装具や補助具を使用していただく場合があります。また膝が痛いと、どうしても膝をかばった歩き方をしがちで、他の関節などに負担がかかります。そのような場合は、歩行中の悪い動きを見つけスムーズにバランスのとれた歩行ができるように指導を行うことがあります。
基本的に保存療法で治療を進めますが、すり減ってしまった軟骨や変形した骨は元に戻りません。そのため保存療法を続けていても、あまり効果がみられず、このまま保存療法を続けていくのは今後の人生を考えるともったいないのではないか、という場合は手術という選択肢があることをお伝えする場合があります。しかし悪性腫瘍などと違い命にかかわる病気ではなく、変形性膝関節症だからいきなり手術ということはまずありません。ですので変形が進んでいても今の生活に不自由なければ、手術を受ける必要はないのです。ただ、痛みのせいで歩くのがしんどい、今までの生活を続けにくくなったなどと思われ、ご本人が手術によって今の状況を改善したいと思われれば手術を受けるタイミングではないでしょうか。
変形性膝関節症の5段階
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