専門医インタビュー
福井県
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医学の進歩により、変形性膝関節症や関節リウマチがどのように進行していくのかが分かってきているようです。それにともない、様々な治療法が進歩していますが、治療のタイミングが重要な場合もあります。春江病院
岡野智先生に、最近になり分かってきた内側半月板の後根断裂の予後や、関節リウマチの治療法などについてくわしくうかがいました。
内側半月板の後根断裂
内側半月板の後根(こうこん)断裂は、半月板が少し変性し弱くなっている中高年女性の方に多く見られます。この内側半月板後根断裂は、階段昇降やしゃがみ込んだ時など膝を曲げた状態で体重がかかった時に膝がグキッとなり発生します。患者さんによく聞いてみると、断裂が生じる少し前に、ふくらはぎが痛かったなどと前兆のようなものを感じたと言われることもあります。この内側半月板後根断裂は最近になり分かってきたもので、まだまだ認知度が低いため、MRI検査を行っても見過ごされたり、他の疾患と誤解されたりする場合もあり注意が必要です。
半月板は、膝にかかる負担を分散し、衝撃を吸収するクッションのような役割が知られています。それ以外に、膝関節は平らなすねの骨(脛骨(けいこつ))の上に、2つの丸い部分からなる太ももの骨(大腿骨(だいたいこつ))が乗った形になっており、これらを安定した状態で固定するフープ(円形の枠)のような役割もあります。この土台となる半月板の一部が切れてしまうと、大腿骨の重みに耐えかねて半月板が関節の外にはじき出され(逸脱)、急速に軟骨がすり減っていく場合があります。従来、変形性膝関節症は、何十年もかけ、ゆっくりと半月板が変性し軟骨がすり減り、O脚になっていくと思われていました。しかし、最近では、内側半月板の後根(こうこん)断裂によって、発症後、短期間で急速に軟骨がすり減ったりして変形が進むこともある、ということが分かってきました。
1~2ケ月もすれば自然に痛みが取れることもあるのですが、治ったわけではなく、半月板が逸脱し、更に軟骨の欠損が進んでいくケースもあります。また、変形が一気に進行する場合と、いったん症状は落ち着くのですが、しばらくして痛みが再発し、そこから再度変形が急速に進行してしまう場合があります。早期に診断し、半月板を修復する手術や、ご自身の関節が温存できる膝周囲骨切り術を行うと、進行の予防や元の痛みのない生活への復帰が期待できます。膝関節の治療にはその患者さんの状態に応じた色々な治療法がありますが、まずは正しく状態を把握し、より効果的な治療の機会を見極めることが大変重要です。
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