専門医インタビュー
山梨県
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中高年の膝の痛みの原因で圧倒的に多いのは、変形性膝関節症です。最近は、超音波(エコー)を用いた画像検査や注射療法、術後の疼痛管理など、新しい方法も始まっており、膝痛の治療が進歩しています。加納岩総合病院の院長で山梨リハビリテーション病院と甲府北口駅前リハビリテーションクリニックの非常勤医師でもある中澤良太先生に、変形性膝関節症の治療法を中心にお話を伺いました。
膝痛を引き起こす主な原因は、大きく3つに分けられます。1つは、「外傷(ケガ)」によるもの。2つ目は、関節リウマチや偽痛風のような「炎症」によるもの。3つ目は、加齢や膝の使い過ぎなどによって起こる膝関節の軟骨の「変性」によるものです。若い方の膝痛は、外傷によるものが多いのに対して、50歳代以上の中高年の膝痛は、膝関節の軟骨のすり減りによる変形性膝関節症など変性によるものが多いとされています。変形性膝関節症は、1対2から1対3くらいの割合で女性のほうが発症しやすく、加えて、肥満気味の方やO脚を含めて姿勢が悪く、膝に負担がかかっている方も変形性膝関節症を発症しやすいと言われています。
立ち上がるときや歩き始め、階段の昇り降りのときに膝に痛みを感じる、正座ができなくなってきた、膝が伸びなくなってきた、夜間痛といって夜寝ているときにズキズキと痛むといった症状が2週間くらい続いている場合は、変形性膝関節症などの疾患が疑われるので、整形外科を受診して、レントゲンやMRI、CTなどの画像検査も受けながら、膝の痛みや膝の動きが制限されている原因を確かめることをお勧めします。
最近は、超音波(エコー)を用いた画像検査が普及し始めています。エコー検査のメリットは、受診したその日のうちに、診察室内で、患部に直接触れながら膝関節周囲や内部の画像を確認できることです。しかも、MRIやCTは静止画であるのに対して、エコーは膝を動かしながら検査ができるので、靭帯や筋肉などの動きの評価ができ、血流の状態や両膝の左右差の比較も簡単にできるというメリットもあります。関節リウマチとの鑑別(区別)にもエコー検査は有用だとされています。
大きく分けて保存療法と手術療法があります。変形性膝関節症の場合、あまりにも膝関節の軟骨の変性変化が強いなどの特別な場合を除いては、保存療法から行われるのが一般的です。
保存療法としては、主に内服による薬物療法や足底板などの装具療法、運動療法があります。膝関節内への注射療法として、前述したエコーを使用する医療機関も増えています。膝関節内に注入する薬剤はヒアルロン酸や局所麻酔薬、ときにステロイド剤で、最近は、「ハイドロリリース」というのも行われています。ハイドロリリースというのは、エコーで内部を確認をしながらヒアルロン酸や局所麻酔、生理食塩水などの薬剤を膝関節の神経周りに注射する方法です。局所的に薬剤を注入することで神経へのストレスを軽減し痛みの改善を図ります。
膝というのは荷重のかかる関節ですから、リハビリテーションによって下肢や体幹を鍛えることもとても重要です。体幹がしっかりしてくると、膝痛が緩和することもあります。このような保存療法を2~3か月受け続けても膝の痛みが改善せず日常生活に支障がある場合は、次の治療の選択肢として手術療法があります。
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