専門医インタビュー
中高年の女性に多い変形性股関節症。成長する過程で股関節の屋根部分が十分発達しない寛骨臼形成不全が原因の多くを占めると言われています。症状の進行を予防するための保存療法や、近年の手術方法、術後のリハビリなどについて、新潟市民病院整形外科医長の酒井芳倫先生にうかがいました。
寛骨臼形成不全
腰部脊柱管狭窄症
中高年の方であれば、鼠径(そけい)ヘルニアや大腿ヘルニア、股関節周辺の筋肉や腱が股関節の骨に引っかかりポキポキと音が鳴る弾発股(だんぱつこ)や股関節唇損傷が考えられますが、腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)や変形性股関節症が主な痛みの原因と考えられます。
腰部脊柱管狭窄症は、腰椎(ようつい)にある神経の通り道が狭くなることで、お尻の部分などに痛みやしびれを感じることがあり、変形性股関節症の方よりも多くおられます。また、変形性股関節症は、股関節の屋根となる部分が発育過程で十分に成長しない寛骨臼形成不全が主な原因です。屋根の部分が小さいため、年齢を重ねると軟骨がすり減りやすく、進行すると骨と骨がぶつかり痛みや骨の変形が起こります。男性よりも圧倒的に女性の方に多い疾患で、30代くらいから症状が現れる方が多いのですが、早い方では中学生くらいから症状が現れることがあります。
骨切り術
痛みを感じたら我慢をせず、早めに受診することをお勧めします。動いていない時に痛みがあればお腹など他の部分の原因が考えられますが、動いた時に痛みが強くなるのであれば、骨や筋肉などの運動器に原因があると考えられますので、その際には整形外科を受診するのが良いでしょう。
また、早期に受診し、寛骨臼形成不全が見つかれば、できるだけ進行を遅らせる治療を行うことができ、人工股関節置換術以外の治療が選択できる可能性が高まります。人工関節置換術は変形性股関節症の代表的な手術ではありますが、耐用年数という課題があるので、できるだけ遅い年齢で行ったほうが良い手術だと考えられています。特にご家族など近親者に変形性股関節症の方がいる場合、将来、変形性股関節症になる可能性があります。そのような場合、人工関節の手術までの期間を延ばすために、ご自身の骨盤の骨を切り屋根の部分を大きくして痛みを緩和させ、ご自身の股関節を温存する骨切り術という治療を選択することができます。
水中歩行
痛み止めの使用や筋力トレーニングが主な治療となります。筋力トレーニングは、自宅で行うスクワットやお尻の部分にある中殿筋(ちゅうでんきん)のトレーニングを推奨しています。その他に、水泳や水中歩行、自転車など股関節にできるだけ負荷をかけずに、股関節周りの筋肉を鍛えられる運動がお勧めです。痛みを抑えるために消炎鎮痛剤を服用いただくことがありますが、長期的に使用すると腎臓や胃などに悪影響を与える場合があるので、痛みがある時にだけ服用するようにしましょう。
日常生活では、できるだけ股関節に負担をかけないことが大切になります。ジャンプするような運動や、階段の下りはできるだけ避け、エレベーターなどを使用したほうが良く、また、体重コントロールも大切です。股関節が痛くて十分な運動ができない場合は、食べる量を減らすなどの工夫が必要になってきます。
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