専門医インタビュー
中高年の女性を中心に、幅広い世代に広がる外反母趾。親指の付け根の痛みや腫れ、変形に悩みながらも、幅広の靴を履いてなんとかやり過ごしている人は多いのではないでしょうか。外反母趾の治療は保存療法から手術までさまざまな方法が確立されてきているそうです。今回は、苑田第一病院の渡辺 淳先生を訪ね、外反母趾の人が日常生活で気をつけることや靴の選び方、具体的な治療選択肢などについてお話を伺いました。
痛みの原因としては、親指が「く」の字のように曲がってしまう外反母趾(がいはんぼし)が圧倒的に多いです。
発症の男女比は1:9と女性がほとんどで、特に50歳以上の方に多くみられます。加齢に伴い筋力が落ちることで足が柔らかく潰れやすい状態(こんにゃく足)になることが原因の一つと考えられています。
外反母趾では、「親指の根元が靴に当たって痛い」「親指と人差し指が交差してしまう」「足の裏にタコや魚の目ができる」といった症状が現れます。体重をかけると足幅が広がったり、土踏まず(アーチ)が潰れていたりする場合は外反母趾になりやすく、靴の影響のほか遺伝的な要素も関わってきます。
外反母趾以外では、強剛母趾(きょうごうぼし)も少なくありません。強剛母趾では指の伸展がうまくできず、見た目の変形は少ないものの、指先をそらしたりつま先立ちをすると痛い、指先で地面を蹴って歩けないという症状が出ます。
外反母趾は年齢とともに徐々に進行し、痛みも変形も強くなります。気になる痛みや腫れがある場合には、早めに整形外科へ受診されることをおすすめします。外反母趾は有病率30% といわれる一般的な病気ですが、痛みがなければそのままにしている人が多いかもしれません。変形が軽度であれば様子を見ても良いかもしれませんが、変形が大きく進行してくると親指と人差し指が重なってきたりする可能性があるので注意が必要です。重症化してからの治療では複数の指に及ぶ手術が必要になるケースもありますので、痛みの有無に関わらず一度整形外科を訪ねてほしいと思います。
診察では、体重をかけた状態でレントゲンを撮り、足の形態変化を確認します。また、「足」の触診とともに「靴」の触診・視診も大切です。外側のかかとばかりがすり減っている、親指の付け根あたりに穴が空いているなど、靴にはその人の歩き方や痛みの部位を示す情報がたくさん詰まっています。ぜひ日頃から履き慣れた靴を履いて、靴の診察も受けてみるのはいかがでしょうか?
極端に重症化してしまった外反母趾ではブカブカ靴を選ばざるをえません。そして、一般に販売されている外反母趾専用の靴などは、親指が靴に当たることを少なくするために大きめ・幅広に作られているものがほとんどです。
しかし外反母趾を進行させないためには、大きめ・幅広な靴は避ける方が良いでしょう。確かに幅広の靴を履くと痛い部分が当たることは減るものの、靴の中で足の移動が起きやすくなり、変形を増強させてしまいます。日本人はどうしても生活の中で靴の脱ぎ履きが多いため、脱ぎやすい靴を選びがちですが、きちんとした靴のアドバイスを受けることで「窮屈(窮靴)が気持ちいい」と自覚される人が少なくありません。
靴選びのポイントとして、靴紐などで調整できる靴をおすすめします。外反母趾の場合、指の付け根部分はゆとりがあった方が痛くないのですが、その手前の中足部(ちゅうそくぶ)は締めるようにします。スニーカーでいえば、指先に一番近い穴は緩めにし、2~4番目の穴にかけて締めるのが目安です。またかかとを合わせて足先を浮かせて靴紐を結ぶと、足の幅が細くなりアーチが保たれた形状になり外反母趾の抑制にもなります。
脱ぎ履きしやすいように靴紐はいつも緩めにしているという人も多いかもしれませんが、できれば毎回足を入れてから締め直してください。また、6cm以上のヒールのある靴は、外反母趾の原因となることが報告されているので避けた方が良いでしょう。
ページの先頭へもどる
PageTop