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専門医インタビュー

高齢者に起きやすい上腕骨近位端骨折 ご自身に合った治療で肩の機能回復を

  • 岩部 昌平 先生
  • 済生会宇都宮病院 整形外科 外科系診療部長補佐
    主任診療科長 人工関節センター長
  • 028-626-5500

栃木県

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専門分野:手外科、整形外科外傷(骨折・脱臼等)、関節外科
資格等:日本整形外科学会整形外科専門医・認定リウマチ医・認定スポーツ医・認定脊椎脊髄医、日本手外科学会認定手外科専門医・認定手外科指導医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本整形外科学会代議員、日本手外科学会代議員、日本肘関節学会評議員、日本骨折治療学会理事、東日本手外科研究会運営委員

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この記事の目次

転倒やスポーツ中の事故や交通事故などにより、肩の骨を折ってしまう方は少なくないそうです。肩関節は他の関節に比べて可動域が広く複雑な構造をしており、骨折してしまったときには適切な治療やリハビリで回復を目指していくことが欠かせません。今回は、高齢者に特に多い肩の骨折「上腕骨近位端骨折(じょうわんこつきんいたんこっせつ)」について、済生会宇都宮病院の岩部昌平先生に教えていただきました。

上腕骨近位端骨折とはどのような骨折ですか?

激しい勢いで手をついたときや肩自体をぶつけてしまって骨折

上腕骨は肩から肘をつなぐ骨であり、上腕骨近位端骨折とは肩周囲や腕の付け根で起こる骨折です。上腕骨近位端骨折の原因は主に2つ考えられます。ひとつは激しい勢いで手をついたとき、その衝撃が肩に伝わって折れてしまうもので、もうひとつは肩自体をぶつけてしまい骨折するものです。
上腕骨近位端骨折を生じるのは圧倒的に高齢者に多いですがその背景には、年齢が高くなると骨粗しょう症により骨密度が低くなる⽅が増えていくことが挙げられます。転んで手をついた拍子に肩の骨が折れてしまう、または転んでも手をつくことができずに肩から落ちて骨折する、という例が頻繁に見られます。一方で、若くて活動性の高い方が上腕骨近位端骨折を生じるのは、スポーツ中の怪我やバイク・自転車での転倒事故といった「高エネルギー外傷」が多数を占めます。

どのような形で整形外科を受診する患者さんが多いですか?

大きな事故であれば救急車での搬送となりますが、肩単独での怪我であればご自身で歩いてこられたり、ご家族の付き添いで来院されたりする方が多いです。普段経験しないような強い痛みがあるけれども、骨折しているかどうかが分からなくて、「これは深刻なのでは…」と危機感を持たれて受診する方が大多数といえます。
一方で、ひとり暮らしでなかなか病院に来るのが難しいという高齢の方では、数日間何とか我慢を重ねたのちに痛みに耐えかねて受診というケースも見られます。上腕骨近位端骨折が起きると肩が上がらなくなるものの、手指が使えなくなるわけではないため、人によっては受診が遅れてしまうようです。肩に痛みや違和感があれば早いタイミングで整形外科を訪ねてほしいと思います。

整形外科に受診すると何が分かりますか?

右の肩関節を前から見た図

レントゲン検査やCT 検査を受けていただくことで、肩がどのように折れているのか特定することができます。骨折が関節の外で起きている状態が外科頚骨折(げかけいこっせつ)、関節内にある上腕骨頭が折れてしまっている状態が解剖頚骨折(かいぼうけいこっせつ)です。
上腕骨頭の外側には関節を動かす筋肉が付着した大結節(だいけっせつ)と小結節(しょうけっせつ)があり、この2つの結節のどちらか、あるいは両方が独立して骨折するケースもあります。これらの骨折が組み合わさって骨片が2つ、3つ、4つと増えると、それぞれ2パート骨折、3パート骨折、4パート骨折と呼ばれることがあり、後者になるほど重症で治療が難しくなります。

上腕骨近位端骨折の治療方法について教えてください

保存療法(手術しない方法)と手術する⽅法に大きく分けられ、基本的にはまず保存療法で対応できないかを考えます。このとき重要になるのは、「たくさん折れている(粉砕の程度)」よりもむしろ「折れた骨が大きくずれているか」です。
ずれ(転位)が小さければ、三角巾(帯)やアームスリングで腕を吊るし固定します。ただし、肩関節は動かしていないとすぐに動かなくなるという点で注意が必要です。折れた骨がくっつくまで動かさないでいると、関節そのものの可動域が制限される可能性が高く、関節がかたくなる拘縮(こうしゅく)のリスクも高まります。そのため、固定と並行して動かせる範囲で早期にリハビリを進めていきます。一方、骨折した部位の転位や変形が大きければ手術が必要となります。


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