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専門医インタビュー

足首の関節リウマチにはさまざまな治療法があります。痛みや腫れが続くなら早めに専門医に相談を。

  • 猪狩 勝則 先生
  • 東京女子医科大学病院 整形外科 リウマチ性疾患先進的集学医療寄附研究部門 特任教授
  • 03-3353-8111

東京都

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日整会整形外科専門医
リウマチ学会指導医・専門医

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この記事の目次

足首に痛みや腫れが生じる場合、原因の一つとして関節リウマチがあげられます。手や足の指といった小さい関節に症状が出るイメージのある関節リウマチですが、足首にも症状が出ることがあり、進行すると関節が変形してしまうこともあるそうです。足首の関節リウマチになった場合どのような治療法があるのか、東京女子医科大学病院の猪狩先生にうかがいました。

関節リウマチについて教えてください

関節リウマチ

関節リウマチ

関節リウマチは自己免疫疾患の一つとされ、免疫の異常により自分自身の細胞や組織を攻撃してしまうことで、関節の周りを包んでいる滑膜という組織に炎症が生じる病気です。
炎症が続くと破骨細胞が増殖し、軟骨や骨が破壊されていきます。30歳代~50歳代に多いとされていますが、近年は高齢化に伴い年代を問わなくなりつつある傾向があります。
性別による差は3対1または4対1の割合で、女性に多く発症します。

関節リウマチを発症する原因や主な症状について教えてください

これまでいくつかの遺伝因子や環境因子が報告されていますが、まだ詳細な原因は解明されていません。環境因子としては歯周病や喫煙が関節リウマチの発症や増悪の要因になることが分かっています。
初期段階では足首に関節炎のようなこわばり、腫れ、発熱などを伴うことが多いです。症状が進むと次第に関節が変形して痛みが強くなり、歩行が困難になることもあります。

受診のタイミングは、いつが良いのでしょうか?

痛みや腫れが1ヶ月ほど続いていれば、まずは受診されることをおすすめします。関節リウマチは放っておくと関節破壊がどんどん進んでしまいますが、早期の段階で治療を開始すれば、薬物療法などの保存療法で良くなるケースも多くあります。特に腫れについては滑膜に炎症が起きているサインのため、あまり放置しないほうがいいでしょう。
受診すると、まずは足首 のどのあたりに痛みや腫れがあるのか診察します。またレントゲン検査、血液検査などを行い、症状の原因を特定します。

足首の関節リウマチの治療にはどのような方法がありますか?

足底板

足底板

治療を始めるタイミングが初期であれば、保存療法を行うのが一般的です。保存療法には、注射や飲み薬による薬物療法、サポーターや足底板(靴の中敷き)による装具療法などがあります。もちろんその方の症状にもよりますが、まだ早期の段階で治療を始めた場合、1~2ヶ月で寛解(病気による症状がほぼ消失した状態)にいたる方もいらっしゃいます。
関節が破壊されている、軟骨が大きくすり減っているか無くなっている、薬物療法などでも痛みや機能障害が軽減しない場合は手術が選択肢に入ってきます。

手術療法の一つである人工足関節置換術について教えてください

人工足関節置換術

人工足関節置換術

関節の足の変形した表面を取り除いて骨の形を整え、金属やポリエチレンでできた人工関節に置き換える手術です。患者さんの状態によっては、関節の周りにある靭帯を弛めたり締めたりすることで変形を矯正します。変形している部分を人工関節に置き換えることで痛みが軽減され、歩行機能の改善が期待できます。
手術時間は一般的に2~3時間です。手術では全身麻酔だけでなく下肢にも麻酔をおこないます。そうすることで、痛みがピークとなる手術の翌朝くらいまで痛みの軽減を期待できます。手術をして2~3日もすれば痛みは落ち着きますが、痛みが続くようであれば、薬を服用したり注射をしたりします。

人工足関節置換術後のリハビリテーションについて教えてください

ベッドの中で足全体を上げたり下げたり

手術をした翌日または翌々日からリハビリを始めます。足首は固定した状態で、ベッドの中で足全体を上げたり下げたりします。手にも関節リウマチの症状が出ている場合は、なかなか松葉杖を扱いづらいので、歩く練習ができるようになるまでは車椅子を使用される方も多いです。体重をかけるリハビリは、手術をして10日ぐらい経ってから始めていきます。初めは立つ練習を、続いて足へ部分的に体重をかける練習を⾏います。
20日も過ぎると、ほとんどの方が足に体重をかけられるようになるので、さらに歩く練習を進めていきます。入院期間は一般的に3週間ぐらいで、退院の時期になるとほとんどの方が松葉杖を使わず歩けるようになります。

退院後の生活について教えてください

手術をして1ヶ月ぐらいから、日常生活や事務仕事であれば復帰が可能です。足首に負担のかかる肉体労働などは2ヶ月後ぐらいから検討するといいでしょう。
日常生活に戻った後は、走ることやジャンプを含むスポーツ、コンタクトスポーツを控えるようにしましょう。また足を捻らないよう注意してください。理由は、これらの動作は人工関節に大きな負荷をかけてしまうからです。一方、スイミング、ウォーキングやハイキング、ゴルフや自転車など足首に負担がかかりにくいスポーツであれば問題なくできることが多いです。
手術後は足首に負担が掛かることを心配しすぎてあまり動かない方がいますが、動かなくなると拘縮し、可動域(動作できる範囲)が狭くなることがあります。そのため、入院中に習ったリハビリをご自分でも続けていただき、毎日動かすことを心掛けましょう。

退院後の検診は必要ですか?

定期検診

手術をして2ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、1年後の定期検診は必ず受けるようにしましょう。また異常がなくても、少なくとも年に1回は検診で足首の状態を診てもらうことをおすすめします。
関節リウマチに対する薬物療法で免疫機能が落ちている患者さんの場合、手術後は特に感染症に気を付けていく必要があります。足首の痛みや腫れ、発熱を生じたらすぐに主治医に状態を診てもらい、処置を受けるようにしましょう。

足首 の痛みや腫れに悩んでいる方へメッセージをお願いします

「歩くこと」は日常生活や仕事、旅行やスポーツなどあらゆる動作の基本です。高齢化社会の今、QOL(生活の質)のためにも歩ける身体を維持することはとても大切です。
関節リウマチの症状や治療法は、患者さんによってさまざまです。初期の段階であれば、薬物療法などの保存療法で症状が改善される方もいらっしゃいます。また変形が強く保存療法では改善がみられない方でも、現在では人工足関節置換術など手術の選択肢があります。足首に痛みや腫れがある方は一人で悩まず、専門医に相談し原因を知ることから始めてみましょう。


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