専門医インタビュー
石川県
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股関節は、人体の中でも立ったり歩いたりする動きの中心となる、重要な関節です。股関節に障害が生じると、痛みが出て動きが悪くなり、日常生活も大変不便になります。「痛みは我慢しすぎないでください。最終的には人工関節といういい治療法があります」と話す、医療法人社団光仁会 木島病院 整形外科の久門 弘 先生に、変形性股関節症の症状からその治療法について、また3D技術を駆使した術前計画、筋肉や組織を極力切らないMIS人工股関節置換術など、幅広くお話を伺いました。
変形性股関節症の進行
関節軟骨がすり減る 骨が変形してしまう
股関節の表面を覆っている関節軟骨がすり減り、軟骨の下の骨の表面が凹凸になったり、硬くなるために痛みが出たりして股関節がスムーズに動かなくなるのが、変形性股関節症です。関節軟骨は2~4mmほどの厚さがあり、股関節にかかる体重を吸収するクッションの役割をしています。この軟骨は、股関節が滑らかに動くための役割を果たしています。ところが、関節軟骨がすり減り骨も変形してしまうと、立ちあがりや歩き始めなどの動作開始時に股関節に痛みが出ます。初めは動いていれば痛みは去りますが、症状が進行するに連れて、たくさん歩いた後などにも痛みを感じるようになり、さらに症状が進むと常に痛みが取れず股関節が固くなって動きが悪くなります。40代以降の特に女性の股関節の痛みの原因は、まずこのような変形性股関節症を疑います。
変形性股関節症(両脚)
股関節は、太ももの骨(大腿骨)の上端にある丸い骨頭が、骨盤のくぼみ(寛骨臼)にはまり込む構造になっており、普通は、骨頭の3分の2程度が寛骨臼に包み込まれています。股関節は体重を支え、その周りの筋肉によって前後・左右に動かしたり、あるいは捻ったり回したりと、自在に動かすことができるのですが、この覆いのかぶり方が生まれつき不十分な状態の人がいます。この状態を「臼蓋形成不全」といい、女性に多いのが特徴です。この臼蓋形成不全が、日本人の変形性股関節症の主な原因です。歳をとるにつれて関節の変形が進んできた時に症状があらわれます。顔つきや体格・骨格が親子で似ているように、骨盤や股関節も母子で似ているため、母親が変形性股関節症を患っていれば、娘も将来、症状が出る可能性があります。しかし多くの場合は、子どもの頃には症状は現れず、30代~40代になってから初めて痛みが出てくるようです。
変形性股関節症を悪化させないためのアドバイスとしては、まずは股関節に強く負担のかかる運動、例えば、激しいスクワット運動や飛んだり跳ねたりするような動きを避けることです。また、股関節の安定性に関わるおしりの筋肉や太ももの筋肉をしっかり鍛えることが望ましいですね。体重が増えれば増えるほど、股関節に負担がかかりますから、肥満にならないよう体重をコントロールすることも大事です。ですから、プールでの水中歩行などはとてもいい運動だと思います。股関節に強く負担のかかるような動きは避け、ストレッチ運動で関節の柔軟性を維持しつつ、地道におしりや太ももの筋肉をつけていけば、関節の変形の進行を抑えることができますし、症状を軽減することもできるでしょう。ただ人は、歳をとるごとに体力や筋力が落ちていきますし、体の中のコラーゲンの分泌も少なくなりますから、股関節の動きは年々悪くなり、変形も徐々に進行していきます。無茶をすれば当然、早く痛みが強くなりますから、どこかの段階で手術を受けなければならない可能性は出てくると思います。
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