専門医インタビュー
東京都
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高年齢化に伴い、人工関節置換術についてはマスメディアなどで耳にする機会が多くなりましたが、人工関節の「再置換術」についてはまだまだ情報が少なく、不安を抱えている患者さんが多くいらっしゃいます。現在の人工膝関節には約30年の耐久性がありますが、あくまでも「人工物」ですので、長い年月の間にはすり減ったり、金属と骨との固定が弱くなったりすることで、人工関節の緩みなどの症状が出てくることがあります。その他、骨折や感染症などで、術後のトラブルを訴えるケースもあります。「もし何か不具合が生じたら、健康的な生活機能を維持するためには、リビジョン(再置換術)も必要な対応策です」と話す杉本和隆先生は、人工膝関節置換術および再置換術のスペシャリスト。今回は人工膝関節の再置換術に特化して、いろいろと詳しくお話を伺いました。
人工膝関節置換術を行った後、歩行に何らかの不具合が生じた場合に、その問題の原因を正しく診断し、もとの機能を取り戻すために、人工膝関節をもう一度入れ直す手術です。例えば、どんなにいい車でも何年も乗っていればタイヤが摩耗してきて、すり減ったタイヤの交換が必要になります。人工関節も同じように、長年使っていれば消耗してきますし、具合が悪くなれば交換した方がいい場合もあります。しかし、交換するタイミングがずれてしまうと、手術の難易度が上がりより大がかりになることもありますので、再置換術では「いつ・どうやって取り換えたらいいか」の見極めが重要なポイントになります。なお、人工膝関節置換術を受けたほとんどの患者さんは、初回に置き換えた人工関節を生涯使っており、特に取り換えることはありません。特に人工膝関節では、約96%が10~15年間は問題なく使用しており、2~3%が何らかの原因で再置換術を行っているのが現状です。最近の人工関節は、材質も進歩しており手術手技も向上していますので、すぐに再置換術が必要になるわけではありません。
再置換術が必要となる症状の具体例
大腿骨顆上骨折(左)、磨耗による骨溶解(右)
まず考えられるのは、人工膝関節そのものが壊れてしまった場合ですが、実際にはほとんど例がありません。次に、患者さんの骨が脆くなって人工膝関節が緩んでしまう場合があります。手術を受ける人の多くは60歳以上ですので、女性は骨粗鬆症が起こりやすい年齢といえます。骨量が減って骨が弱くなってしまうため、人工膝関節が緩んでくることがあります。また、靭帯が切れたり骨折したりしたために、関節の機能が果たせなくなった場合も再置換術が必要になることがあります。大変なケースとしては、感染があげられます。体内の常在菌が人工関節に付着し繁殖すると、膝が腫れて熱をもち、痛みが出ます。この場合は、早急に患部を開いて人工関節を取り出し、菌を洗い流して新たな人工関節に置き換えなくてはなりません。以上のケースは、術後からある程度の年月が経過してから起きるアクシデントですが、手術直後に起こるケースとしては、脱臼があります。術後、無理な姿勢を取ってしまったために、まだ安定していない人工膝関節が外れて周辺の組織を傷めてしまった場合は、再置換術が必要になります。
定期検診では、X線撮影のほか
血液検査や骨密度検査も必要
特に大切なことは、初回の術後から定期的な検査をきちんと受けることです。検査は、人工膝関節置換術の経験豊富な専門医による診察を受けてください。検査内容としては、患部のレントゲン撮影だけでなく、血液検査や骨密度検査も受けてください。骨の細胞の状態は血液検査で分かりますので、それをチェックすることで人工関節に緩みが出るのを予見できます。また、高齢発症のリウマチ、糖尿病、喫煙習慣がある人や肥満の人なども、再置換術が必要になる確率が高いことが分かっていますので、定期的な血液検査は非常に重要です。骨密度検査も、骨粗鬆症の予防・治療の点から大事です。関節周囲の骨、背骨、かかと、大腿骨など、各部位の骨に対して使用する骨粗鬆症の治療薬はそれぞれ違います。術前と術後に骨密度検査を行って、早めに手を打ちましょう。
もう一つ、患者さんに伝えているのは、「不具合や痛みを我慢しないでください・諦めないでください」ということです。一般に、再置換術が必要な患者さんが手術を受けないでいると、寝たきりになるリスクが高まります。そして再置換術が必要な患者さんほど手術を怖がり、「上手くいくはずがない」などと諦めてしまう傾向が強くあります。しかし実際は、初期の段階で少しのトラブルであれば、人工膝関節の一部分だけを取り換えるだけで済むこともあります。多くの人が強い痛みと歩行困難が出てから受診しますが、人工膝関節が緩んでグラグラになり、脚に力が入らない・脚を地面に着けることができない状態になってからでは、手術はかなり大がかりになってしまいます。
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