専門医インタビュー
愛知県
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階段を昇り降りするときや、しゃがんだときに感じる膝の痛み。ついつい、そのままやり過ごしたり我慢したりしがちですが、早期に膝の専門医の適切な診断を受けて治療を行うことで、つらい膝の痛みから解放されることも夢ではありません。今回は、痛みの原因や病院を受診するタイミングや膝の痛みを減らすための日常生活における注意事項、人工膝関節置換術をはじめとする治療法などについて、膝関節の専門医である前原外科・整形外科の前原一之 院長先生にお話を伺いました。
膝の痛みを引き起こす病気を大きく分ければ、関節リウマチか変形性膝関節症、この二つが原因疾患となります。関節リウマチは血液検査をすれば診断がつきますので、病院で診察を受ければ、膝の痛みの原因がどちらなのかはすぐに分かります。ただ、原因として最も多いのは変形性膝関節症です。年齢とともに膝の軟骨が徐々にすり減ってしまい、それによって痛みが生じてきます。軟骨はクッション材の役割をしていますので、軟骨がすり減るというのは、膝のクッションが薄くなることと思っていただければよいでしょう。加齢とともに軟骨がすり減っていき、最後には軟骨がなくなってしまいます。そうすると、骨と骨が直接あたるようになり、痛みが強く出てきます。
変形性膝関節症のX線 正面(左)と側面(右)内側の軟骨がすり減っているのが分かります
痛みの多くは、膝の内側から出てきます。状況としては、小走りしたときに痛い、ちょっと重いものを持ったときに痛い、階段の昇り降りで痛い、しゃがんだときに痛い、というようなことが始まりです。軟骨がすり減り変形が進むと靭帯のバランスが崩れ、さらに変形が進む、という悪循環が起こります。日本人の特徴としては、膝の内側が変形してO脚になる傾向が多いですね。通常、膝の軟骨は外側と内側と同じだけの厚みで存在していますが、内側の軟骨だけがすり減ってしまい、バランスが悪い状態になってしまいます。レントゲンで診た場合、正常な状態では骨と骨の間に隙間がありますが、加齢で軟骨がすり減ると、この隙間がだんだん小さくなってしまいます。そして、軟骨がなくなるまで進行すると隙間が全くなくなり、脚を動かすと骨と骨とが擦れ合うゴリゴリという「礫(れき)音」が聞こえてくるようになります。
消炎鎮痛剤の内服、湿布などの外用薬などの薬物療法も、一時的に症状を抑えるのには有効です
軟骨の減少は老化に伴うものですので、ある程度は予防できても、軟骨の減りそのものをなくすことは難しいでしょう。正座ができなくなるとか、かがんで立ち上がるときに痛くて立ち上がれないとか、痛みだけではなく生活動作に支障が出てきたときが受診のタイミングです。変形性膝関節症だと診断された場合、体重コントロールに取り組んでいただき、膝にかかる負荷を減らすことが第一になります。同時に、膝の痛みを訴える人は太ももの筋肉が落ちていることが多いので、筋力をつける訓練を行います。自分で運動ができる人はよいのですが、一人では不安だったり、どうやって筋力をつければよいか分からなかったりする人には、整形外科で行っているリハビリを受けてもらい運動療法をスタートします。
ヒアルロン酸の関節内注射
痛くて歩けないようであれば、プールで水中を歩くなど、負荷を減らして運動するのもよい方法です。膝の変形が進んでいる場合には、ヒアルロン酸の関節内注射を行うこともあります。ヒアルロン酸は、軟骨が残っていればその再生を促します。症状の軽い人であれば、4〜5回の注射で痛みがなくなります。ただ、軟骨が全く残っていない場合はヒアルロン酸を注射しても痛みは改善されません。体重コントロール・リハビリ(運動療法)・ヒアルロン酸注射をセットで行い、2〜3ヶ月経過しても効果があらわれない場合は手術療法を考えていきます。
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