専門医インタビュー
福岡県
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高齢化が進み、膝の痛みに悩む人も右肩上がりで増えているようです。中でも中高年に多いのは、膝軟骨の擦り減りなどに起因する変形性膝関節症。日本全国で2,000万人以上もいるといわれています。その治療法には、保存療法から手術療法まで様々がありますが、中でも年々増加しているのが「人工膝関節置換術」です。人工膝関節置換術は膝の痛みを取り除くと共に変形を治し、O脚だった脚も真っ直ぐにするなどの特徴があります。今回は、「手術が必要な場合でも無理に急ぐ必要はありません。納得するまで十分に考えてください」とアドバイスする、膝関節の専門医である九州労災病院の河野勤先生に、周りのサポートの重要性なども含めてお話をお聞きしました。
変形性膝関節症のX線
一番多いのは「変形性膝関節症」です。膝の痛みで来院される50代以降の女性の8割~9割の原因疾患となっています。骨の継ぎ目の部分が関節ですが、硬い骨の表面は、柔らかでスベスベとした軟骨でコーティングされており、膝関節が滑らかに動くためのクッションの役目を果たしています。この軟骨が徐々に擦り減り、その下の硬い骨同士がゴツゴツとぶつかることで骨の変形が進んでいってしまうのが、変形性膝関節症です。男性よりも女性に多く加齢や肥満などが主な要因ですが、他にも色々な要素が関係していると考えられ、はっきりとした発症原因はまだ分かっていません。欧米人の変形性膝関節症は、まっすぐな脚の形のまま進行し、X脚となり悪化していくケースが多いのですが、日本人の場合はO脚の人が多く、脚の骨の格好もひとつの要因だと考えられています。日本人で、X脚に変形し膝に痛みが出る人の場合は、関節リウマチやケガ、あるいは先天的に骨の形が特殊であることが原因であるケースが多いようです。
周囲の筋肉が弱るため、膝の水は定期的
に抜きましょう
まずは、肥満や激しい動きを伴う仕事・スポーツなど、膝に負担がかかることをなるべく避けるような生活指導と筋力トレーニングなどの運動療法を行い、症状の進行予防を図ります。体重が5kg減少するだけで、症状が明らかに改善する人も少なくありません。50歳くらいで症状も初期の段階であれば、運動療法を行い膝周囲の筋肉を集中して鍛えることで、日常生活にあまり不便を感じないレベルにまで状態をもっていくことは可能だと思います。もちろん、生活指導と運動療法だけで完全に進行を予防できるわけではありませんが、膝に負担をかけない生活を意識して暮らしている人は余り強い症状が出ず、変形がそれなりに進行・悪化しても、毎日の生活と折り合いをつけながら暮らせている人が多いように感じます。痛みが強い人には、痛み止めの投薬や関節注射を行います。よく「膝の水を抜くと癖になる」という人がいますが、膝に水が溜まると腫れぼったく重くなり、周囲の筋肉も弱りますから、定期的に水を抜き、そこに炎症を抑え関節の潤滑を改善させるヒアルロン酸などを注射(関節内注射)すると良いでしょう。症状が初期~進行期の人であれば、このような保存療法で、痛みをかなりコントロールすることができます。
人工膝関節置換術のX線
人工膝関節置換術とは、変形した骨の損傷面を取り除いて人工の関節に置き換える手術です。症状が進行期~末期で痛みが強い場合、手術療法を検討することになります。中でも人工膝関節置換術は、他に代替えする治療法がない場合の最終手段としての治療法という位置付けです。本当に症状が悪く、「生活指導や運動療法、薬物療法といった保存療法では改善が難しい」、「生活レベルを維持できない」といった場合には、非常に強力で有効な治療法となります。骨の変形が進み、軟骨がほとんどなくなって歩くのにも困っている人には、手術の効果が期待できます。また、人工膝関節の可動域は概ね120度ですから、それ以下しか膝が曲がらない人も手術の効果が期待できます。なお、人工関節の耐用年数は15~20年といわれていますが、これは15~20年前のインプラントの現時点でのデータであり、近年、人工関節の材質や性能が飛躍的に進化していますので、今後の耐用年数は間違いなくもっと伸びていくでしょう。
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