専門医インタビュー
神奈川県
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中高年の特に女性に多い膝のトラブル。症状としては、特に階段を降りる時に痛みを感じる人が多いようです。さらに、腫れやO脚になってくるといった外見上での変化がみられるようになり、15分くらいの連続しての歩行が困難になってきたら変形性膝関節症などの病気を疑ってみる必要があります。「人工膝関節置換術の目的は、最期まで自分の脚で動くことができるようにすること。手術のタイミングは先延ばしにせず、自分の人生をどう生きたいかをじっくり考えて決めてほしい」と語る、座間総合病院 人工関節・リウマチセンターの奥茂宏行先生と山下博樹先生のお二人にお話を伺いました。
変形性膝関節症のX線O脚(がに股)になっており、内側の軟骨が減っています
膝のトラブルは60代後半くらいからの女性に多くみられます。特に外傷はないのに、立ち上がりや動き始めに膝が痛い、階段の昇降がつらい、膝に水がたまって腫れてしまう、といった症状がみられるようであれば、それは変形性膝関節症かもしれません。変形性膝関節症とは、大腿骨と脛骨の間にある膝関節のクッションの役目をしている軟骨がすり減ってしまったために、骨と骨が直接ぶつかって痛みが出てくる疾患です。痛みが強くなるとともに関節が変形して歩きづらくなってしまいます。もともと膝関節が変形しやすい骨格の人もいますが、加えて過体重や加齢に伴って痛みが出てきます。また、中高年の女性は骨粗鬆症にかかりやすいという問題もあります。軟骨も減るし膝の骨も弱くなってくる、これも膝関節の痛みの原因の一つです。
変形性膝関節症の主な症状
初期の段階であれば、体重をコントロールすること、膝に負担がかからないよう生活動作に気をつけること、膝の上部の筋肉(大腿四頭筋)を鍛えることなどの保存療法が有効です。痛みが強くなれば、膝関節にヒアルロン酸の注射を打つこともあります。骨が弱くならないように骨粗鬆症の予防・治療を並行して続けていけば、関節の変形が進まなくてすむでしょう。しかし、痛みを我慢しすぎて整形外科を受診しなかったり、受診したとしても医師任せで体重を軽くする努力をしない・あまり関節を動かさないでいると、変形性膝関節症は徐々に進行してしまいます。保存療法の中では、体重コントロールと適度な運動が重要です。立っているだけで、膝には体重の3倍くらいの圧力がかかります。普通でも年齢が進むにつれて膝の関節軟骨が減ってしまいますので、体重による負担が加わると関節が耐えられなくなります。適度な運動をすれば、消費カロリーも増えるし骨も丈夫になります。
大腿四頭筋を鍛える運動例
手でイスを掴んで腰かけ、膝を伸ばして3~5秒間維持します(左)
太ももに力を入れて、膝下の枕を5~6秒間押しつぶします(右)
また、痛いから動かないでいると筋力はどんどん弱っていき、さらに動きづらく全身の運動機能が落ちてしまいます。変形性膝関節症は、「ロコモティブシンドローム(運動器の障害により要介護になるリスクが高い状態のこと)」のきっかけになってしまう疾患です。患者さんには、「多少痛くても動きましょう」、「できるだけ歩いてください」とお話しています。これらの保存療法を続けても痛みが改善せず、歩くのがつらい、洗濯物を持って二階に上がれないなど、生活に支障が出てきたら人工膝関節置換術を勧めています。
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