専門医インタビュー
東京都
プロフィールを見る
外傷などの原因がないのに、膝がこわばる、突っ張るような感じがして歩きづらい、特に動き始める時に痛くなる…、「変形性膝関節症」は、日本では高齢女性の約3人に2人に見られる関節の疾患です。「歳のせいだからと我慢しないで。早めに整形外科を受診して、痛みの原因を確かめてもらいましょう」と話す山本精三先生に伺いました。
変形性膝関節症のレントゲン(外反-外側に反っている状態)
長年膝を使い続ければ、軟骨がすり減ってきます。車のタイヤがすり減るのと同じです。変形性膝関節症とは、膝関節の軟骨が減ったために起こる関節の痛みや変成・破壊です。軟骨は、一度失われると再生することはできません
ただし、これらの膝の軟骨の変化は、必ずしも歳のせいだけで起こるわけではありません。高齢になっても痛みもなくスタスタと歩いている人は沢山いらっしゃいますし、逆に30代でも膝が悪い人もいるのですから。変形性膝関節症の主な原因は、膝の軟骨のすり減りですが、すり減りを起こす要因として注意が必要なのが、特に肥満です。
そうです。人が歩く時には、体重の2~3倍、階段の昇降には5倍以上の負荷が膝にかかっています。ですから、20歳の時に比べて、20キロも体重が増えている人は、特に注意が必要です。20歳の若者が10キロ、20キロのコメを担いで、何時間もスーパーを歩いている姿を想像してみてください。膝は悲鳴を上げるでしょう。膝を傷めないためには、適正な体重を保つことが重要です。
変形性膝関節症の患者さんには、まず、毎日きちんと体重を測ること、そして今の体重を増やさないことを指導しています。肥満は、動脈硬化や高血圧、メタボリック症候群を引き起こす要因でもありますし、特に注意が必要です。
しかし、「減量しましょう」と言っても、簡単なことではありません。そこで、膝の痛みを訴えてくる患者さんに私が提案しているのは、生活習慣を見直すことです。①食事は腹8分目②野菜から先に食べる③間食をしない④毎日体重計に乗る⑤毎日適度な運動をする―、この5つに気をつけて生活してくださいと話しています。
このように生活習慣に気をつけた上で、変形性膝関節症の進行を防ぎ、痛みを抑えるために保存的な治療法を続けてもらいます。
膝痛を防ぐ生活習慣5原則
膝が痛いと動くことが億劫になるので、外出する機会が減ります。それでも体は元気なので食べることに楽しみを見出し、体重は増えるのに筋力は落ちて、さらに膝痛が増すという悪循環に陥りがちです。そのまま車いす生活や寝たきりになり、要介護状態になってしまうこともあります。それを防ぐためにも、脚の筋力が落ちないような運動を続けることが大事です。運動療法ですね。毎日、散歩をするなどの有酸素運動と、大腿四頭筋を鍛える体操を続けているうちに、膝痛が軽くなったという人もたくさんいます。
また、変形性膝関節症はO脚になりやすく、膝の内側の軟骨がすり減りやすいので、それを補うために靴の外側が1センチほど高くなるように「中敷き」を入れる装具療法も有効です。歩く時に痛みが出る場合は、杖を使うのもいいでしょう。痛みを緩和する薬物療法もあります。
ヒアルロン酸を関節内に注射して補充する方法も有効です。ヒアルロン酸は、もともと関節内の滑液(かつえき)に多く含まれ、動きを滑らかにし、クッションの役割をもつ軟骨に影響を与え、膝を守っています。でも、根本的に軟骨を再生しているわけではありません。これらの保存的な治療法を十分に行っても、思うような効果がでなかったり、常に痛みがあって歩行がスムーズにできないほど進行してしまった場合には、人工膝関節置換術を勧めています。
ページの先頭へもどる
PageTop