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専門医インタビュー

関節リウマチと診断されたら… 専門医に教わる治療法・進行予防法

大阪府

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日本リハビリテーション医学会、日本整形外科学会認定リウマチ医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本整形外科学会、日本リウマチ学会(評議員)、日本手の外科学会(代議員)

この記事の目次

関節リウマチの疑いがある、あるいは関節リウマチと診断された場合に、これからどのような症状が現れ、どのような治療法があるのか、進行を予防する手立てはあるのかなど、多くの方が不安を抱えておられると思います。そこで今回は、上肢、特に肘の手術を多く手がけておられる整形外科医で関節リウマチの専門医でもある秋田鐘弼先生に、肘の関節リウマチを中心に、病気についての知識や治療法、進行予防などについて教えていただきました。

関節リウマチになると、将来、関節が変形したり、寝たきりになったりしてしまうのでしょうか?

関節リウマチは、悲劇的な病気をイメージする方が多いのですが、実際には、関節リウマチの症状や重症度、自然経過は患者さんそれぞれで違います。そもそも関節リウマチがなぜ発症するのか、原因がはっきりと分かっているわけではありません。血縁関係に関節リウマチの人がいるなど、何らかの遺伝的な背景を持った人に、喫煙など、関節リウマチの発症に悪影響を及ぼすと言われている環境的な要因が加わることで発症するのではないかと言われています。発症のメカニズムが非常に複雑な病気なのです。

関節リウマチの症状は、ごく大まかに、軽症、中等度、重症度と分けられ、非常に進行が早く、関節破壊まで進んでしまう重症度の患者さんは、現状で約2割程度おられます。逆に言えば、8割くらいの患者さんは、適切な時期に適切な治療を行うことによって軽症や中等度で留めることが可能になってきています。

関節リウマチと診断されると、どのような治療が行われますか?

関節リウマチの治療は、「薬物療法」、「手術療法」、「リハビリ」、「患者さん教育」の4本柱で行われています。

少し専門的になりますが、私たち医師が関節リウマチの患者さんを治療するうえで目指すのは、「寛解(かんかい)」(症状が落ち着いて安定する)という状態です。

寛解にも大きく3段階あり、最初に目指すのは、痛みなどの自覚症状がなくなる「臨床的寛解」。次に関節破壊の進行を予防する「構造的寛解」を目指し、最終的に痛みなどの自覚症状も関節破壊もすべて抑えられている状態の「機能的寛解」を目指します。この治療で主体となるのが薬物療法ですが、構造的寛解、機能的寛解を目指す際に、滑膜切除、関節形成などの手術療法を追加することが有効な場合があります。

関節リウマチの治療を受けるうえで心がけておくことはありますか?

関節リウマチの治療を受けるうえで大切なことは、疑わしい症状や血液検査の結果などが出たら、すぐにリウマチ専門医を受診して、早期診断と治療方針を立ててもらい、できるだけ早く治療を開始することだと考えています。

ちなみに、リウマチ専門医での治療によって病状が落ち着いたら、私は、その後の治療は通院しやすい近所のかかりつけ医などで継続し、3ヵ月に一回とか半年に一回リウマチ専門医を受診して、病状を確かめるというスタイルでの治療も可能だと考えています。その場合、リウマチ専門医とかかりつけ医が連携していることが望ましいので、リウマチ専門医がいる病院への通院が大変な場合は、受診した医療機関に聞いてみてください。患者さんにとって無理なく治療を続けるということが大切だと思います。

2割くらいの進行してしまう関節リウマチでは、どのような治療法がありますか?

薬物療法だけでは関節破壊への進行が抑えられない場合には、薬物療法に加えて人工関節置換術に代表される手術療法が有効な場合があります。

関節リウマチの痛みというのは、関節を囲んでいる袋(関節包)の内側にある滑膜が何らかの原因で増殖して、痛みや炎症、軟骨や骨を溶かす物質を出すために、関節が腫れて痛み、さらに進むと関節を形成する骨の表面にある軟骨が破壊されていき、軟骨の下にある骨がむき出しとなって、骨同士が直接ぶつかって痛みます。人工関節置換術とは、関節自体を人工物に置き換えて、骨同士が直接当たらないようにする外科手術です。

肘の人工関節置換術を受けると、どのような効果が期待できるのでしょうか?

関節をそっくり人工物に交換しますから、関節リウマチの痛みから解放される方がほとんどです。それに加えて、関節破壊が進むと、痛みだけでなく、関節部分の骨がなくなるので腕がグラグラしたり、関節が固まってしまって腕の曲げ伸ばしがしづらいという障害が起きてきますが、傷んだ関節を人工肘関節に置換することで、いずれの場合にも動作が著しく改善したという患者さんが多くおられます。

さらにもう一つ、他の関節への負担を和らげるという効果が期待できます。関節リウマチの患者さんは肘の関節だけでなく、肩や手首など別の関節も同時に痛むことが多くあります。その場合に、例えば肘の痛みや動きを人工関節置換術で改善することで、手首や肩など別の関節への負担が軽減されるという相乗効果が期待できます。

人工肘関節置換術の種類や費用について教えてください。

肘の人工関節には、関節部分がつながっている「連結タイプ」と、関節部分の人工物同士が離れている「非連結タイプ」と大きく2種類あります。関節破壊が進行するタイプの患者さんの場合は、次第に骨がなくなるので、腕がグラグラと不安定になってきます。その状態で人工肘関節置換術を行う場合には、脱臼することがない連結型が多く使われています。一方、骨が十分に残っている比較的軽度で若い患者さんの場合には、非連結型が使われる傾向にあります。非連結型は、連結型に比べると取る(取り出す・引っ張る)動作などによって脱臼の恐れがありますが、その半面、将来、人工肘関節の交換が必要になった場合に、連結型よりも患者さんの体への負担(主に骨切除量)が少なくて済むという利点があります。どのタイプを選択するかは、手術を行う医師の考え方の違いもありますので、よく相談してみてください。

費用に関しては、高額療養費制度の対象になりますので、医療費の助成が受けられます。利用できる制度や自己負担額などは、受診された医療機関で医師や看護師に聞くと教えてもらえると思います。

関節リウマチの進行を予防することはできますか?

進行を予防するうえで大切なことは、薬物療法によって関節リウマチそのものをコントロールすることです。そのうえで、私が患者さんにアドバイスしていることは、心と体にゆとりを持って生活してほしいということです。

私の患者さんは大阪の人が大半ですが、いかんせんせっかちな方が多い(笑)。それほど急いでいないのなら階段ではなくエスカレーターを使い、片手でさっとやってしまうのではなく、なるべく両手を使う。どの動作をするにしてもできる限りゆっくりやることを心がけて、可能なら周りの人にできるだけ手伝ってもらってくださいとお願いしています。それに加えて関節リウマチは自分の免疫が自分自身の組織を異物とみなして攻撃してしまう免疫疾患ですので、心にゆとりを持って、明るい気持ちでいることも大切です。実際、落語を聴いて笑った後に血液検査をしたら、炎症の値が少し下がったという例もあるようです。こうした心がけが進行を予防したり、遅らせたりすることに役立つのではないかと思います。

肘の関節リウマチの患者さんにアドバイスをお願いします。

関節リウマチの治療は、薬物療法、人工肘関節置換術ともに非常に進歩しています。その恩恵を十分に受けるには、適切な治療の内容と、その治療を受けるタイミングがとても重要であることを知っておいてください。

薬物療法も関節や骨破壊が進んでしまってからでは、得られる効果に限界がありますし、人工関節置換術も骨がしっかりとあるうちに受けたほうが患者さんの満足度は高くなります。手術は怖い、できればやりたくないと思うのは普通のことだと思います。ですから最初から手術をすると決断しなくても、まずは医師の話を聞いて、人工関節について知ることから始めてみてもいいと思います。

人工関節置換術について言えば、私のように肘を得意とする医師や膝が得意な医師がいて、いわゆるスペシャリスト化しています。肘の人工関節置換術について知りたいと思ったら、受診されている医師に相談をして、紹介してもらってください。タイミングを逃さないためには、医師から勧められるのを待つのではなく、自分から積極的につらい症状や困っていることを伝えて、それぞれの専門医になるべく早めに相談するということが大切だと思います。


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