専門医インタビュー
東京都
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両側の場合、手術はもちろん、麻酔もリハビリも一度の入院で済むというが大きなメリットです。痛いのも一度で済みます。入院期間も、片側手術より1週間程度延びるだけで、リハビリテーション上の問題はありません。
もちろん、「怖いから、とりあえず片側だけやってください」という患者さんもいます。片側だけ手術すると、荷重が良くなった方にかかるため、一時的にもう片側の進行度合いが緩和します。しかし、片側はやはり悪い状態のままなので跛行など歩行障害が残るため、だいたい1年くらい経つと、もう片側も手術してくださいといわれます。なお、片側手術の場合、左右の脚長差がむしろ拡大する場合もありますが、両側同時手術の場合は、脚長差をより小さくすることが可能です。
両側同時手術のデメリットとしては、侵襲が大きくなり、出血も多くなることがあげられます。片側と比べ、体への負担も大きくなることから、合併症や年齢、体力を考慮して手術するかどうかを判断する必要があります。
なお、両側同時手術を行うことのできる施設は決して多くはないため、実施可能かどうか事前に施設に問い合わせた方が良いでしょう。
リハビリで使用する歩行器と杖
リハビリは、専門の先生による指導の下で、術後だけではなく術前にも行う必要があります。術前のリハビリでは、一般的な四頭筋訓練で筋力アップをはかることは無論のこと、いろいろな組織をほぐし、荷重軸などのバランスを調整してよい歩き方にもっていき、凝り固まって曲げ伸ばしできなかった箇所を可能な限り取り除いていきます。術前のリハビリには、できれば2か月ほど時間をかけてください。術前リハビリに時間をかけることで、変形が極めて重症な患者さんでも組織が柔らかくなり、手術可能になる場合もあります。術後のリハビリは、年齢や体力などによって個人差がありますが、概ね2週間程度行います。T字杖を使用して、階段をちゃんと昇り降りできるようになったら、退院となります。
リハビリのプログラムは、患者さんによってケースバイケースで決めています。いうなればオーダーメイドです。具体的には、患者さん自身の生活動作レベルだけではなく、バリアフリーかどうかといった住宅環境、家に帰ったら介護してくれる方がいるかどうかというような家庭環境まで考慮して決めています。また、手術前には必ず「術後3日間は痛いです。でも、必ず段階的によくなりますから頑張ってください」とお願いします。たしかに理学療法士が「鬼に見えた」という患者さんがたくさんいるくらい痛いです。でも、皆さん術前のリハビリでかなりよくなることを経験済みなので前向きに取り組んでくださいます。
なお、当院では、手術を担当する医師と看護師、リハビリを担当する理学療法士、入院生活を担当する看護師などのスタッフによるチーム医療で、患者さんの治療を多角的にサポートしています。チームで一体となって患者さんの治療を行うことは、患者さんの不安を取り除くだけでなく、患者さんに合わせたリハビリの実践を実現し、最終的には患者さんの早期回復に繋がるものと考えています。
ジョギングは制限していますが、他は特に制限していません。ゴルフも問題ありません。正座は日本の大切な文化だと思いますが、亜脱臼の位置でかなりのストレスがかかるため、摩耗はもちろん、人工関節が壊れる原因になるため、避けてください。
やはり「(手術を)やってよかった」といわれるのが一番うれしいですね。あと、「女性が働く」ということをテーマに啓蒙活動をされている女性が、「1時間立ちっぱなしで講演を行うことが辛くなって体がもたない。さりとて壇上で座って話すのでは聴衆の方々に失礼だし、勇気を与えられない」といって来院されました。意を決して手術をしたら、「元気に講演することができ、ご自分だけではなく、講演を聞いている方たちをも勇気づけることができて感謝していますといわれた」ときは、ちょっと鳥肌が立ちました。
現在、膝の痛みで悩まれている患者さんには、「痛みのない生活と痛みのある生活の違いが、ご自身の人生にどう影響するか」を真剣に考えていただくよう、お願いしています。ただ手術を怖いというだけで手術を受けないというのは、もったいない人生だと思います。
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