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専門医インタビュー

股関節疾患にはいろいろな治療選択肢があることをまず知ってください。その上であなたにあった治療を一緒に模索していきましょう。

この記事の専門医

山内 裕樹 先生
  • 山内 裕樹 先生
  • 医療法人八重瀬会 理事長・同仁病院 院長
  • 098-876-2212

沖縄県

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専門分野:股関節外科・脊椎脊髄外科・リウマチ外科・外傷外科 平成11年東京医科歯科大学卒業
専門医:日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医、日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション専門医、日本整形外科学会認定リウマチ医

この記事の目次

手術を検討する際の基準はありますか?

骨切り術

骨切り術

一番大事にしているのが患者さんの要望ですね。ある程度以上の変形の場合、患者さんには初診の段階から、選択肢の一つとして情報提供をさせていただいています。そして、患者さんから人工股関節にしたいというご要望が出た場合に、それにお応えするというようにしています。現状では人工股関節の耐用年数が15〜20年と言われていますので、そこから逆算して再置換(再手術)が必要になる可能性の高い年齢の方だと「少し早い」という判断になるかと思います。ただ今の人工関節は、ポリエチレンなどの性能が以前と比べて向上しているので、耐用年数はさらに向上しているのではないかと考えられています。
例えば、比較的若い股間節変形の方で、一般的には骨切り術が適応と考えられる方がいらっしゃったのですが、骨切り術だと切った骨がくっつくまで約3ケ月必要で、その間に荷重制限など日常生活に支障が生じます。その方はご自身の事情などから再置換になる可能性もご理解され人工股関節置換術を選択されました。
10日程度で退院されましたが、その後の日常生活にも支障なく、非常に満足されていらっしゃいました。また私が人工股関節を執刀した方で最高齢は99歳の方で、それまで痛みのためほぼ車椅子生活だったのですが、退院の際は杖無しで歩いて帰られました。
このように年齢だけでなく、患者さんそれぞれの生活環境などにも違いがあるため、手術方法や手術後の生活を説明し、患者さんの要望にできるだけ沿う方法を選択しています。

人工股関節置換術の流れについて教えてください

一般的には、手術前日に入院していただき、翌日に手術をして、術後大体2週間くらいで退院されることが多いです。
当院の場合は特に感染対策を重視していますので、手術前の準備に1時間くらい時間をかけています。具体的には、消毒やドレーピング(綺麗な布で不潔面を覆うこと)、手術者側が清潔な格好をする準備などを行います。
手術は痛んだ股関節の損傷面を取り除き人工関節に置き換えます。具体的には大腿骨の痛んだ骨頭を切除し、その代わりに金属もしくはセラミック製のステムとボールを挿入します。
また受け皿となる臼蓋側を綺麗に丸く加工し、そこに金属製のカップと軟骨の代わりになるポリエチレン製のライナーを入れます。手術時間は約1時間です。なお、両側の股関節を手術する場合は、片脚が終了した後、次の脚の手術前に消毒やドレーピングのし直しを行いますので、入室から退室までは大体4時間くらいとなります。

両側同時手術のメリットは?

人工股関節置換術後のX線(両側同時)

両側が痛い方の場合、ほとんどの場合、両側を同時に手術しています。もちろん片側ずつ手術することもできるのですが、手術しない側の痛みで術後のリハビリがなかなか順調に進まなかったり、可動域が改善しづらかったりすることもあるため、両側同時に手術することも重要な選択肢となります。
両側ともに股関節の可動域が悪い場合、片側ずつ手術を受けるよりも、両側同時に手術した方が股関節の可動域を改善しやすいという研究もあり、実際にもそう感じることが多々あります。片側のみ手術する場合、早い方では手術当日からリハビリを開始される方もいますが、両側同時の場合でも、手術翌日からはリハビリを行っています。

MIS(最小侵襲手術)とは?

山内 裕樹 先生

今はMIS(エム・アイ・エス)という言葉がひとり歩きしているような気がしています。
MISという言葉が出始めた当初は、傷の大きさが5〜6cmという話もあり、私も実践していた時期もありました。しかし、極端に小さな皮切では手術の時に中がどうしても見えにくくなります。
結果として、筋肉などの中の組織を痛めてしまっていた、ということにもなりかねません。 そのため近年はむしろ、しっかりと筋肉や組織を傷めないようにした上で最小限の皮切で手術する、というのがMISと理解されていると思います。
結局は、その方が術後の回復経過も早いですし、患者さんの満足度も高いと感じています。
とは言うものの、「傷が大きい」と言っても私は10cmも切るわけではありません。
8〜9cmで筋肉を切らないで済むのと、5〜6cmで組織を傷つけてしまうのとどちらが良いかということだと思います。
ただ、どうしても傷の大きさにこだわるという方もいらっしゃるので、そのときはデメリットもご説明した上で、できるだけご要望にお応えするようにはしています。


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