メニュー

専門医インタビュー

歳だからとあきらめないで 両側同時の人工股関節置換術で活動性を取り戻す

この記事の専門医

佐藤 貴久 先生
  • 佐藤 貴久 先生
  • 善衆会病院 診療部長 整形外科部長 人工関節センター長
  • 027-261-5410

群馬県

プロフィールを見る

1998年 山形大学医学部卒業、1998年 群馬大学整形外科入局、2003年 伊勢崎市民病院、2004年 群馬大学整形外科 医員、2006年 助教、2012年 部内講師、2013年 公立富岡総合病院 整形外科医長を経て2016年4月より現職。日本整形外科学会専門医、日本股関節学会、日本人工関節学会、東日本整形災害外科学会、関東整形災害外科学会、日本小児股関節研究会、日本リハビリテーション医学会、関東股関節懇話会幹事。

この記事の目次

性能アップしてきた人工関節

人工股関節を入れ替える原因として、軟骨に替わるポリエチレンが摩耗することが主な原因といわれていました。
ポリエチレンが摩耗すると、その摩耗粉が体に取り込まれたときに破骨細胞を活性化させます。活性化した破骨細胞は人工関節が埋め込まれた周りの骨をどんどん溶かしいていきます。その結果人工関節の緩みが生じ、再手術が必要になる場合があります。
以前の人工関節では、耐用年数が10年くらいといわれていましたが、今の人工関節は、ポリエチレンなどの性能向上などにより、原因となる摩耗が以前に比べるとずいぶん少なくなり、今では20年たっても95%は何も問題がないというデータが出ています。20年前に入れた人工関節がこの成績ですから、今のものはその当時の10分の1くらいの摩耗量で、さらに長持ちすることが期待できます。

なるべく筋肉や組織は切らないですむ手術の工夫を

患者さん一人一人、股関節の形状や変形度合いは違いますから、あらかじめレントゲンとCTを撮ります。股関節にどれくらいの変形があるかを頭に入れておき、どの角度でどうやって入れるかなど、術前の計画を立てます。
最近は、MIS(最小侵襲手術)で行う施設は多いと思います。筋肉をあまり切らずに済む場合はこれでいいのですが、変形がひどく、関節が硬い場合は、筋肉や組織を剥離しないといけなくなります。表面の小さな傷にこだわるあまり、中の組織を無理に引っ張ることになると、合併症の誘因になりかねません。
私自身は、後方からのアプローチで、なるべく筋肉や組織を切らなくて済むよう工夫し、手術時間も出来るだけ短く出血も少なく、一番慣れた手技で自信をもって行っています。

人工股関節置換術を両側同時に行う

両側同時人工股関節置換術後のレントゲン

両側同時人工股関節置換術後のレントゲン

両脚の状態が悪い場合、時期を分けて片方ずつ手術を行う施設もありますが、私は一度に両脚同時に行う手術に積極的に取り組んでいます。両側同時の人工股関節置換術は、どこの施設でも行われているわけではありません。
人工股関節の手術を行うと、今まで固まっていた関節が伸びて脚の長さが長くなります。片方ずつの手術だと、片方の痛みが取れても、もう片方が少しでも痛ければ、それをかばって、どうしても歩行のバランスが崩れます。また腰や膝の痛みも生じかねません。
そのため股関節の痛みが両脚ともに出ている場合は、両側を同時に手術したほうが、手術の負担も1回ですみ、脚長差も補正でき、歩行にも良いというメリットがあるので、出来れば一回の手術で終わらせてあげたいと考えます。両側同時手術を希望する患者さんが多くなっています。
手術時間は、関節の変形度合いによって違いますが、両脚同時に行っても1時間30分くらいです。事前に自己血(片方なら400㏄、両側なら800㏄)を貯めておき輸血に対応します。


この記事の医師がいる
病院の詳細はこちら

ページの先頭へもどる

PageTop