専門医インタビュー
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人工膝関節置換術後と人工股関節置換術後の
レントゲン
人工関節は、膝・股関節ともに傷んだ骨を取り除き金属でできた人工関節に置き換え、その間に軟骨の働きを再現するポリエチレン製のもので構成されます。膝関節の場合は、患者さんの膝の状態などによって内側だけを置き換える部分置換術と全てを置き換える全置換術の2つの方法があります。
現在、人工関節の技術は進歩し、特に軟骨の代わりとなるポリエチレンの材質が向上し、かつてポリエチレンの摩擦粉によって引き起こされていた人工関節の緩みなどが近年は減少しています。そのため耐用年数が向上し、15年で90%以上は入れ替えの必要がないというデータもありますが、これは15年前に行われた手術のデータなので、いまはもっと耐用年数が伸びていると期待しています。
膝や股関節の痛みで困りそれをどうにかしたいと思っている方が手術の対象になるので、手術に耐えられる方であれば手術は可能です。ちなみに、当院では80代後半~90代の方でも人工関節置換術を受けられ、元気に過ごしている方がいらっしゃいます。
膝、股関節いずれの場合も、まずは事前にCTや採血といった検査を行います。
股関節の場合は、骨盤の位置や傾き・動きなどを確認するために、立った時と寝転がった時の両方の状態をレントゲンで確認します。これをもとに、人工股関節を設置する角度を決めていきます。
手術を行う際に注意したいのは、『感染のリスク』ですので、その原因をできるだけ除外して手術に臨むようにしています。例えば歯周病や虫歯などの菌が感染の原因となることがあるので、予め歯科受診をお勧めしてしっかり治療をしていただきます。また、鼻腔などにMRSA耐性菌を保有している方がいるので、検査で検出された場合は専用の軟膏を塗布するなどの対応を行います。さらに、水虫のような足の感染症は股関節や膝関節の患部に近いため、やはりきちんと治すようアドバイスしています。さらに糖尿病のような内科疾患を抱えている方は合併症の恐れがあるため、内科の医師としっかり連携を取り、きちんと糖尿病をコントロールした上で手術に臨んでいただいています。
前側方アプローチ
人工股関節置換術は、人工関節の材質の進歩だけでなく、手術方法も進歩しています。
手術は筋肉をできるだけ傷つけずに関節内に侵入でき、傷口も8cm程度でできる『前側方アプローチ』で行っています。
以前は当院でも後方からのアプローチが主流でしたが、前側方アプローチだと術後の回復も早く、また後方の筋肉を温存できるので、術後の脱臼のリスクが低減しより自然な動作を可能にするものです。後方からと前側方から、両方の方法で手術を受けた方から、「前側方のほうが、痛みが少なく、回復が早い気がします」というお声をいただいたこともあります。医療技術は日進月歩で改善しているため過去の手術との精密な比較はできませんが、前側方アプローチが患者さんの術後ストレスを軽減していると推察します。
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