専門医インタビュー
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2000年前後から行われるようになった、手術の際に切る傷を短く小さくする方法が最小侵襲手術(MIS)です。それまでの手術は、15センチ~20センチは切るのが常識でした。皮膚の切開の程度が小さいほうが、筋肉を切る大きさも少ないし、痛みも少なく術後の回復が早いなどというメリットがあります。今は、傷が8センチ程の最小侵襲手術が主流になっています。 股関節の手術を行うときの切り方には、関節の前方、後方、お尻の横の方(従来の方法)の3つの方法があります。最小侵襲手術を行う場合、後方から切るのが主流で、8割くらいは今でもこの方法がとられています。前方から切るのは難しいのですが、関節の変形の強さ、手術時間、合併症などを考えながら、これらの2つの切り方を使い分けています。
階段昇降の訓練
ウエイトの重さを増やして負荷をかけていく
人工股関節置換術の入院期間は、一般的に2週間ほどです。手術の前日に入院し、手術後は翌日から歩いてもらいます。早期リハビリ、これが非常に重要なのです。以前は少なくとも1週間はベッドに横になっていましたが、逆に回復によくないことが分かっています。骨がきちんとつくには半年くらいはかかりますが、手術方法の進歩や、人工関節インプラントの研究により、手術の翌日から歩いても問題はありません。やはり術後は痛みますが、頑張って歩いていると1週間程度でほとんど無くなります。
リハビリは、起き上がって歩くだけの動作をまず1週間続け、次の1週間は家での日常生活を想定しながら、階段の昇降や座ったり立ったりする動作、靴下の着脱、着替えるなどの動作を繰り返し練習します。入院中には、普通の生活が送れるレベルまで練習を行い、特別なリハビリは行いません。ジャンプするような競技は控えてもらいますが、小走りに走ることができるのは2カ月目くらいから、ゴルフなどの運動は、骨がきちんと付く半年くらいから始めることが可能です。ジョギングなどは4カ月~半年で許可しています。主治医の指示に従って無理のない動きからはじめてください。
術後に注意しなくてはいけないのはインプラントが外れてしまう「脱臼」です。人工股関節置換術を施行後、半年以内に外れてしまうケースが3~5%あるとされています。昔は、脱臼が怖いので正座をしないようにと制限をしたかもしれませんが、今はほとんど特別な制限はありません。手術法もインプラントも、時代とともにかなり進歩していますので、そのような変化をよく知っている股関節の専門医を受診するとよいでしょう。
動くと股関節が痛い、動きが悪いし何か違和感がある・・・、そんな時には我慢しないで、整形外科の、できれば股関節を主に診ている医師に相談をしてください。特に中高年の女性の股関節の痛みや違和感は、正確な原因を調べてもらうことをお勧めします。変形性股関節症の患者の9割が女性です。もしかすると、関節の形成不全があるかもしれません。股関節がいまどういう状態にあり、この先どうなっていく可能性があるか、関節の中でも股関節だけが将来の状態を予測することが可能です。
「運動しなさい」というアドバイスが間違っている可能性もあります。傷んだ軟骨が、運動することでもっと削れてしまう危険性があるからです。しかし、運動で良くなる痛みもありますし、坐骨神経痛などの場合もあります。痛みの原因は、専門医に診てもらわないと分かりません。変形性股関節症の場合、初診から平均して、2年後に手術をする人が多いようです。
股関節が悪いと歩くのも思うようにいかず、最終的には夫婦生活に支障をきたしてしまうこともあります。年齢を重ねても、夫婦は互いに健康でいてほしいもの。股関節の痛みで一緒に外出ができなくなったと、ご主人の方から相談をされるケースも珍しくありません。思い切って手術をすれば、痛みもなくなり、股関節の動きも良くなります。動きが楽になれば、本人ばかりでなくご主人も家族も幸せ・・・ということになるのです。
痛みを取り除き、正常な動きで日常生活を送れるようになるために、股関節の専門医に相談して、適切な時期に適切な治療法を選択しましょう。
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