専門医インタビュー
愛知県
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手術の合併症で怖いのが、エコノミークラス症候群、当院では超音波を使って血栓予防対策を行っています。また、手術後2日目くらいから立位訓練を開始し、順調なら3~5日目くらいで歩行器での歩行、1週間くらいで杖での歩行練習を開始します。
退院までに行うリハビリの内容は、だれでも同じというわけではありません。自宅の玄関を上がることが出来るように、階段がある家に住んでいる人ならその練習、風呂の入り方など、リハビリの担当者が退院後の生活、自宅の様子などをあらかじめリサーチしたうえで、一人ひとりの日常の生活環境に合わせた練習をします。自宅での生活がふつうにできる自信ができたころ、だいたいの人は2週間で退院していきます。
手術後の腫れや痛みはリハビリしようという意欲を妨げますから、大事なのは術後の疼痛管理です。手術後1週間くらいは、ベッドにいる時には必ず「アイシングシステム」(冷却装置)を使って患部を冷やし、腫れや痛み熱を持った状態やある程度の出血を防ぎ、さらに鎮痛剤の服用で除痛をはかりながらリハビリを行っています。
入院中のリハビリは頑張っていても、自宅に戻るとさぼってしまう人もいます。筋力や持久力、膝の曲げ伸ばしの機能は、動かさないとすぐに衰えてしまい、膝は曲がらなくなってしまいますから、出来るだけじっとしていないで、できるだけ動くようにしてください。手術後1カ月の受診の際には、手術中に確認したように膝が曲がるかどうかを確認します。膝がどのくらいスムーズに曲がるかは、人それぞれ。手術前の膝の状態、曲がり加減によりますから、その人のゴール、リハビリで到達する目標に向かって頑張ってほしいと思います。自宅でもきちんと動いているかどうか、すぐわかります。頑張って動いている人はうんと褒めるし、歩いていなかった人には「もう少しがんばって」と励まします。
1カ月くらいは、まだ違和感も、傷跡も、腫れている感じも残っていると思いますが、半年もたてば、人工膝関節は自分の足になじんで、「だいぶいい調子」という人が多いですね。
人工膝関節は、普通に使っていれば20~30年はもつといわれています。ただし、あまり膝を使いすぎると、ポリエチレンが摩耗して擦り減ってくることもゼロではありません。摩耗し始めると、そのスピードが速くなり、時にはすり減ったカスの刺激で骨が溶けてしまうこともあります。痛みが出てきたときはもう事態は深刻になっていて、全部を入れ直す再置換が必要になることもありますから、そうなる前の定期的な検査、経過観察は欠かせません。
治療法は一つではありません、色々な種類がありますから、早めに相談してもらえれば、適切な方法を選べるし、まだ手術をする段階でない場合でも、経過を見てフォローアップもできるのです。
ただ現状は、膝の痛みがあるのに整形外科に通わず、他科でついでに鎮痛剤をもらっているだけで自己流の治療をしている人も多くいらっしゃいます。
膝が痛いからいきなり手術ということではありません。しかし保存療法を頑張ってみたけど痛みが改善せず手術をされた人の中には、O脚が治り身長も2~3センチくらい高くなり、見た目が変わり周りの人にびっくりされた人もいます。人工膝関節置換術は、痛みの改善や活動性を取り戻すだけでなく、整容的にもいい効果と満足度があると思います。また手術を受け「行動範囲が広がった」「友達とバス旅行に行った」「みんなと一緒に、遅れることなくたくさん歩けました」とおっしゃる人もおられます。膝の痛みで悩んだり、手術をした方が良いのかどうか迷っている時は、専門医に相談し悩みや迷いを打ち明けてみて下さい。
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