専門医インタビュー
兵庫県
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ヒアルロン酸の関節内注射
治療には保存療法と人工膝関節置換術などの手術療法があります。初期の段階であれば、まずは膝に負担をかけないようにする生活指導、外用薬の塗布や鎮痛剤内服などの薬物療法、筋力トレーニングなどから始めます。また、歩行時に痛みが出る状態だと、ヒアルロン酸の関節内注射も効果が期待できます。このような保存療法を続けても痛みが改善されない場合は、手術を提案することがあります。
手術を提案する具体的なタイミングは、疼痛のため平地歩行が20 分~ 30 分以下に制限されること。さらに、立った状態でレントゲン撮影し軟骨の厚みを評価した上でかなり軟骨がすり減っている方に対して手術のお話をするようにしています。
しかし手術の説明を受け、その場で手術を決めることはなかなかできないと思います。担当医と十分にお話され、適切なタイミングでその人にあった治療を選択して欲しいと思います。ただし、人工膝関節置換術は膝関節を人工のものに置き換えるもので周囲の筋肉は元のままです。そのため、全く歩けなくなってからではなく、まだ筋肉量があり可動域が十分にある状態で手術を受けたほうが術後の成績も良好なものになります。
人工膝関節全置換術後の
レントゲン
手術には大きく分けて高位脛骨骨切り術と人工膝関節置換術があります。高位脛骨骨切り術は、脛骨(すねの骨)を切ってO脚を真っ直ぐにし、体重が膝の中心から外側にかかるようにして、膝の内側の痛みを軽減する手術です。人工物を使わないため若い人や活動性の高い人に向いていますが、関節の変形が進んで行くこともあり、一生骨切り術だけで過ごすのは少し難しいこともあります。
人工膝関節置換術は、変形して傷んだ関節を取り除き、金属やポリエチレンでできた人工関節に置き換える手術で、関節の表面全体を置き換える「全置換術」と傷んでいる側(主に内側)の表面だけを置き換える「部分置換術」があり、どちらも除痛効果の高い手術です。高位脛骨骨切り術と部分置換術には、変形が軽度で膝の片側だけが悪いなどの適応条件があるので、選択にあたっては専門医とよく相談することをおすすめします。
人工膝関節の一例
人工膝関節自体の歴史は長いのですが、現在使用されている人工膝関節の原型といえるものは1970年代に開発されました。人工関節の耐用年数も向上してきており、最近のデータでは、術後20年で約80%の人が問題なく使用しているようです。ただし、これは20年以上前に手術を行った人工膝関節の長期成績です。現在では、人工関節の性能が向上して摩耗しにくくなっているなど進化しているので、今後の耐用年数はもっと長くなることが期待できます。
また耐用年数の向上と全身状態の管理が進歩したことで、かなり高齢な方の手術も可能になりました。全身状態に問題がなく、ご本人にやる気があれば、年齢に上限は設けていませんので、90歳台で手術を受けられた人もいます。
股関節にある大腿骨頭の中心と足関節の中心を結んだ線の中心に、正確に人工関節を設置できることが非常に大切になります。従来の手術では、術前のレントゲン画像を基に計画を立ててガイドと呼ばれる支柱を設置し、人工関節を設置する場所を決定していましたが、微妙なずれが生じる場合があり経験や感覚が非常に大切でした。しかしナビゲーションを使用すると、経験や感覚だけで行うよりも、より正確な位置に人工関節を設置できるになっています。また従来の手術の場合、ガイドを設置する際に骨に穴をあけるためにある程度の出血がありますが、ナビゲーションを使用することで術後の出血量がかなり減少したことも、大きなメリットといえます。
他の手術同様に数は少ないですが、人工膝関節置換術にも合併症があります。特に注意したいのが血栓症と感染で、その対策が非常に大切です。血栓症予防のために、抗血栓療法を行うとともに術後早期からリハビリを行うようにし、感染に関しては、手術で使用する機器の滅菌を徹底し手術はクリーンルームを使用することで対応しています。
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