専門医インタビュー
人工膝関節置換術の入院期間は一般的には2~3週間です。入院中のリハビリは、手術の翌日からベッドサイドで理学療法士によって行われます。リハビリの内容は、可動域訓練といって膝関節がよく動くように曲げ伸ばしを行い、可動域を確保するための訓練を行います。その他に、筋力増強訓練。痛む膝をかばって使わないようにしていると、その期間が長引くほど筋力低下が起きていきます。それを回復するために筋力増強訓練を行います。あとは、ADL(日常生活動作)訓練。風呂に入る、階段を登り降りするなど、これまで膝痛のためにできなったことを、人工膝関節の膝でもできるようになるための訓練を行います。
人工膝関節置換術後の退院の目安は、第一に手術の傷が治っており、次に、膝を90度に曲げたりまっすぐに伸ばすといった動作ができ、さらには杖をついて歩けるようになるという3つの条件が満たされた場合としています。多くの場合は自宅近隣のクリニックによる外来リハビリに通院してもらっています。
手術後は、ご自身の動かせる範囲の中であれば特に運動制限は設けていません。スポーツについても、ゴルフなど無理のない程度で楽しんでいらっしゃる患者さんが多いです。
しかし寝る時に膝に枕を入れて寝ることはしないよう注意しています。この状態にすると楽と感じる人が多いのですが、曲がった状態で長時間いるとうまく膝が伸びなくなる可能性があります。
また人工関節への細菌感染も注意しなければいけないことの一つです。手術中は、手術をできるだけ短時間で済ませ、清潔操作を行うなどで感染予防に努めています。手術後は、むし歯や足のケガなどによって細菌が血流に乗って人工関節に到達しないよう、患者さん自身が注意する必要があります。
膝の痛みとひと口に言っても、実に多彩です。まずは、整形外科を受診して、しっかりと痛みの原因を突き止めてもらうことが大切です。膝痛の原因がリウマチ性疾患だったとしても、それが炎症による痛みであれば薬物療法で改善することがあります。炎症が引いているのに痛みが残っていたり、レントゲン検査で関節に変形が見られ、それによって生活に支障が出ているようなら、人工関節という選択肢もあります。もちろん、いきなり手術を勧められるようなことはありません。まずは保存療法をしっかり行って、それでも改善しない場合の選択肢として手術があります。
保存療法を受けてもなかなか痛みが改善しないときには、場合によっては、別の視点として、股関節や腰、リウマチ性疾患の可能性を踏まえ、トータルで診療してもらえる医療機関を受診してみるのもいいかもしれませんね。原因をしっかり診断してもらった上で、治療法を選択肢してほしいと思います。
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