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専門医インタビュー

変形性膝関節症に対する手術療法 ~患者さんの状態・希望に合わせた、適切な治療法を選択するために~

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神奈川県

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整形外科専門医
日本整形外科スポーツ認定医
専門分野: 膝 スポーツ外傷、関節鏡視下手術、人工膝関節置換術、人工股関節置換術

この記事の目次

手術にはいくつか種類があるのでしょうか?

高位脛骨骨切り術:
O脚を矯正して内側の負担を減らします

患者さんの年齢や動き方によって、ふさわしい手術療法は異なっていきます。例えば、軟骨はそれほど痛んでなくて半月板が切れた部分が関節にはまって痛みが出ているような場合、内視鏡を使い半月板の傷んでいる部分を削っていく手術を行います(関節鏡視下手術)。
また症状が進行期~末期で、内側の関節軟骨がすり減っていても、外側の軟骨が残っている状態の人、比較的年齢が若い人、できるだけ自分の骨や関節などを残したいという人には高位脛骨骨切り術を行います。これは、O脚を矯正して膝の内側の負担を減らし、痛みを軽減させる手術法です。脛骨に切れ込みを入れて内側を開き、その間に人工骨を詰めて膝の形を外向きにかえ、プレート(金属の板)で止めます。2週間程度の入院が必要で、退院後しばらくは松葉杖を使います。痛みはしだいに軽くなり、1年くらい経つとすり減っていた軟骨が修復されてきます。骨切り術は軟骨の修復を期待する手術ですので、悪くなりすぎないうちに手術を行うことが重要です。
症状が末期でひどく進行しており、関節の動きが悪い(曲がらない、伸びない)、軟骨だけでなく骨まで破壊されている場合には、人工関節置換術が必要になります。

人工膝関節置換術について教えてください。

人工膝関節置換術は、擦り減った骨と軟骨の表面を削り取り、傷んだ関節を人工の関節に置き換えて膝の痛みを取り除く方法です。上下の骨と接している部分は金属(コバルト合金)を被せ、その間にクッションの働きをするような高分子ポリエチレンを入れます。人工膝関節置換術は、膝の悪い患者さんに対する治療法の中でも最終手段ともいえるでしょう。手術は、患者さんにレントゲンで自分の膝の状態を見てもらいながら、どこがどう悪いのか、本当に人工関節が必要かなどを説明して、納得してもらった上で行います。

どんな場合に人工関節置換術を行うのでしょうか?

人工膝関節置換術

人工膝関節置換術は、軟骨だけでなく骨まで削れてしまっている人、痛みがひどくて困っている人、骨切り術など様々な治療法を検討したが人工関節置換術が最善の方法と判断した患者さんなどに行います。例えば、O脚が進行しており、日常生活で15分間続けて歩けなくなった場合など、手術の考えどきだといえるでしょう。タイミングの見極めが肝心です。
人工関節置換術を行う際、患者さん自身がどれだけ困っているかがポイントになります。たとえ90歳でも、もっとどんどん歩きたい、いろんなところに出かけて行きたいという希望や意欲があれば、人工関節置換術を積極的に考えてみる価値はあると思います。あまり歩けなくても、家の中を移動するくらいで構わないというのであれば、無理に人工関節は勧めません。現在の人工膝関節の耐久年数は20~30年ですから、60歳を超えていれば年齢的な制限は特別ありません。人工膝関節置換術は、変形性膝関節症のほかにも、関節リウマチや骨壊死などの治療にも行います。手術となった場合は、患者さんの状態に合わせ適切な方法を選択していきます。

手術の具体的な流れについて教えてください。

人工膝関節置換術 術後のX線(正面、横)

術後の痛みをできるだけ感じず、手術の効果をできるだけ多く得られるようにするためにも、手術は筋肉を切らない方法で行っています。筋肉を切らないことで、従来よりも回復が早く、手術の翌日から立つことも可能です。手術に要する時間は2時間程度、手術後1~2日でたいていの人は自分で足を持ち上げることができるようになります。1週間も経つと杖を使って歩行できるようになり、3週間で退院になります。
術後は、膝が120度は曲がるように、というのが目安になります。120度くらい曲がれば、自転車にも乗れるし階段の上り下りも大丈夫でしょう。ただ、術後の回復度合いは、術前の曲がっていた角度や関節の柔らかさ、どのくらい歩けていたかによって違ってきます。もともとあまり曲がっていなかったのに、人工関節にすればどんどん曲がるようになるわけではありません。術前の筋力が弱かった人は、人工関節にしても歩けるようになるのに時間がかかりますが、痛いながらも筋力があって歩けていた人、膝もよく伸びていた人は、手術後の回復も早いようです。できれば、手術前に筋肉強化や曲げるリハビリをしておくといいでしょう。


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