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専門医インタビュー

〝当たり前の暮らし〟の喜びを、もう一度 ~関節リウマチの治療~

この記事の専門医

広島県

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大阪大学医学部卒。米国テキサス大学サウスウエスタン・メディカル・センターで関節リウマチの滑膜及び骨髄中の間葉系細胞とB細胞について研究。
行岡病院副院長、市立池田病院整形外科部長などを経て、平成24年に浜脇整形外科病院副院長に就任

この記事の目次

術後、自分で続けられるリハビリはありますか?

術後の生活で大切なことの一つとして、筋力低下の防止があります。それには歩くのが一番有効です。手術をした部分が痛いからといって、家でジッとしていると筋力が衰えてしまいます。また、骨が萎縮すると人工関節が緩んでしまうことがあります。歩くのは、萎縮の防止にも効果的でもあるため、ぜひ継続的に行ってください。
その際に気をつけるべきこととしては、膝・股関節の手術をして間もなくはバランスを取りにくいため、できるだけ平らな道を歩いてください。階段や凸凹の道は最初のうちは歩きにくく、転倒のリスクもあります。平らなところを歩いているうちに筋力がつき、バランス感覚もついてくるので、少しずつ慣らしていきましょう。

歩く以外にも、筋力トレーニングをした方が良いか、また控えるべき動作やスポーツについて教えてください。

人間は必要な動きを必要なだけ行うと、それに体がうまく反応し鍛えられていく仕組みになっています。入浴、洗濯、掃除、料理など、日常動作の中で、自分でできることをどんどん増やしていくのが、効果的なトレーニングになります。一方、マシンを使ったトレーニングなど日常生活にない動作の運動は、変形性関節症の場合は問題ないのですが、関節リウマチの場合に行うと、手術していない部分に支障が出るこ とがあります。ジムに通いたい人は、必ず医師に事前に相談をした上で行ってください。
また、歩く、座る、家事をするなどの日常動作ですが、転倒にさえ気を付けていただければ、特に問題はありません。スポーツはゴルフ、水泳、軽いエアロビクスなど、趣味で楽しむ程度の軽いものなら大丈夫です。ただ、スキーやバスケットボール、ロッククライミングなどの、飛んだり跳ねたりする、衝突や転倒の恐れがあるような激しいものは控えてください。そのようなスポーツを楽しみたいなら、手術前に医師に希望を伝えましょう。強度の高い人工関節を使うなど、対応ができます。

日常生活で大切なこと
  • のんびりすごそう。
  • いつもニコニコ楽しく暮らそう。
  • おいしいものをゆっくり食べよう。
  • たっぷり水分をとろう。
  • 大きな声を出そう。
  • からだをほぐそう。
  • ぐっすり寝よう。
  • 手足を清潔にしよう。
  • 歯をみがこう。
  • タバコはやめよう。

生活の中で気を付けることはありますか?

特に気をつけてもらいたいのは、感染症です。人工関節を入れた部分に細菌が進入し、炎症を起こすことがあります。これが悪化すると、人工関節を入れ直す「再手術」が必要になることもあります。感染症は、手術をした直後はもちろんのこと、何年、何十年経っても注意するべき事柄です。
人工関節を入れた部分以外で起こった病気やけがも、一見関係がないように思えますが、油断ができません。肺炎や歯周病、水虫、手足のちょっとした擦り傷などから、細菌が血液に乗って、人工関節に移ってくることがあります。そのため、手術前には、胆のう炎、胆石、腎臓結石、副鼻腔炎などの疾患がないか診断します。虫歯など口腔環境に問題があれば、歯科医で直してから手術に臨みます。

感染症の予防法としては、日頃の感染対策が重要です。「けがをしたら小さな傷でもしっかり消毒する」、「体を清潔にする」、「丁寧に歯磨きをして口腔環境を整える」。当たり前のように思えることですが、このような小さな心がけの積み重ねが体を守ります。また、「手を少し切ったけど直りが遅い」「微熱(37・5度程度)が続く」など、少しでも気になることがあれば、直接医師に相談してください。初期の段階で分かれば、抗生物質の投与などで対応できます。
関節リウマチの患者さんは、投薬治療を並行して続けるケースがほとんどなので、少なくとも2カ月に1回は通院することになります。その際、気になることを積極的に医師に相談してください。投薬治療がない場合でも、人工関節は気づかないうちにゆるみ等の問題が起きている場合があります。半年に1度は定期検診を受け、人工関節の状態に問題がないか、医師に診てもらいましょう。

最後に、関節の痛みに悩む人にメッセージを!

「ハイキングに行きたい」「旅行がしたい」「自由に買い物に行きたい」「これから子育てをするのに、痛いなんて言っていられない」。そんな風に、未来に希望がある人、生活に理想がある人は、手術の痛みやリハビリを乗り越える力を持っています。医師による治療と手術は、あくまでそのサポート役。向上心と心がけが何よりの〝薬〟になります。悲観することなく、前向きな気持ちで治療に臨んでいただきたいと思います。


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