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専門医インタビュー

人工膝関節置換術は健康寿命を延ばすための手術です 痛みは我慢せず、自力で歩くことを諦めないで!

この記事の専門医

  • 泉 亮良 先生
  • 埼玉医科大学 整形外科・脊椎外科 講師
  • 049-276-1111

埼玉県

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東京大学医学部卒業。同医学部附属病院、中田病院等を経て現職。膝と股関節の人工関節手術を多数執刀。中田病院(非常勤)での膝・股関節の専門外来と手術も担当

この記事の目次

術後のリハビリテーションプログラムについて、教えてください。

リハビリテーションの様子

手術の翌日からはリハビリの開始です。人工膝関節置換術を行った時点で、具合の悪かった膝関節は治りましたので、後は切った傷の回復を待つとともに、膝を動かすための筋肉を回復させていくことになります。膝が悪い人は、手術を決めた段階でかなり膝の筋肉の力が落ちていますから、それを回復するためのリハビリは非常に重要です。
リハビリは、まず手術翌日には車椅子に乗り、立てる人には立ってもらいます。そして平行棒を使って歩行訓練を始めます。1週間以内に歩行器で歩ければ順調です。1~ 2 週間で杖をついての歩行訓練をスタートし、階段昇降などを練習します。杖、または杖なしで約200m 歩け、階段昇降ができるようになるのが、入院リハビリのゴールで、約3週間程度で退院となります。ただし、高齢の患者さんで手術前の歩行能力がかなり悪い人や、自宅退院後にすぐに独居生活となる人は、無理せずリハビリ病院へ転院して頂き、しっかりリハビリしてからの退院が良いでしょう。退院後の通院リハビリを含めると、手術から大体3~5ケ月は膝のために時間をかける必要があると思ってください。

手術を受けた後、避けた方がよい動作などはありますか?

普段の日常生活の中で、基本的にしてはいけない動作はありません。ただし、膝の硬さは人それぞれですが、正座できるようになる人は稀です。床からの立ち上がりは傷が当たり、痛みが出やすいので、布団よりベッドの生活の方が良いでしょう。入浴は温泉含めて問題なく、車や自転車の運転も許可しています。ボーリングや水泳、ゴルフなどのスポーツはOK ですが、ジャンプや体当たりをするような衝撃の強いスポーツは避けた方が無難でしょう。それ以外に関しては、むしろ、家の中に引きこもらないで、散歩やウオーキング、買い物、旅行など積極的に外に出ることを勧めています。体重が100 キロ以上もある欧米人でも耐えられる人工関節ですから、大概の負荷は大丈夫です。人工膝関節置換術は、健康寿命を延ばすために行う手術です。患者さんには、「手術後は、あまり大事にしすぎないように」と、いつも話しています。なお、事前にリスクを回避するために、手術を受けた後は、必ず定期的に検査を受けてください。半年~ 1 年に一度は定期健診を受け、人工関節の状態を確認してもらいましょう。

現在、膝の痛みで悩まれている患者さんへメッセージをお願いします

「何とか歩けるから」と変形性膝関節症を放置していると、痛いだけでなく歩けなくなってしまい、果ては要介護の状態で寝たきりに…といった状態に陥ってしまう可能性があります。「膝の痛みやO脚は歳のせいだから仕方がない」と諦めたり我慢したりするのではなく、その先のことを考え適切に対応し、要支援・要介護になるのを未然に防いでください。変形性膝関節症と診断され、関節内注射などを行っても良くならなかったとしても、次には人工膝関節置換術という手段があります。手術が怖いのは皆さん同じですが、全く歩けなくなってから人工関節にしようと待っていたら、手術のタイミングを逃してしまいます。生活に支障が出てきたら手術も視野に入れて、膝専門の整形外科医を受診して詳しく説明を聞きましょう。
手術はできるだけ身近で、丁寧な対応を行ってくれる施設で受けることが大切です。退院後、多くの患者さんが些細なことで不安を感じるようですが、「通院が苦にならない」、「何かあればすぐに診てもらえる」といった病院であれば、何かあってもすぐに「大丈夫ですよ」と言ってあげることができます。人工膝関節置換術は、手術をして終わりというものではありません。手術を担当した者の責任として、患者さんの生涯に渡ってフォローを続けていくことが医師の役目だと考えています。


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