関節治療の専門医に聞いてみました!

第274回 あきらめないで肩、股関節の痛み専門医に相談し
適切な治療法を選択しましょう

樋口 直彦 先生
ドクタープロフィール
経歴:帝京大学卒業
資格:日本整形外科学会認定専門医専門分野:肩関節・肘関節・スポーツ整形外科
田巻 達也 先生
ドクタープロフィール
経歴:三重大学卒業
資格:日本整形外科学会認定専門医日本体育協会公認スポーツドクター
専門分野:股関節・膝関節・人工関節
エリア 大阪府 タグ
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肩関節や股関節の痛みや可動域制限に悩んでいる人の中には、思い込みなどで最初から治療をあきらめて放置している人も少なくないようです。「大切なのは正しい原因を知ることです」とアドバイスする樋口直彦先生に肩関節の痛みの原因と治療法を、田巻達也先生に股関節の痛みの原因と治療法についてそれぞれお話をうかがいました。

肩関節に痛みが出る主な原因を教えてください

肩関節周囲炎

肩関節周囲炎

樋口 多く見られるのは、俗に四十肩・五十肩と呼ばれる「肩関節周囲炎」と「腱板断裂」です。
肩関節周囲炎は、はっきりとした原因はわかっていませんが、主に加齢によって急に痛みが出ることが多く、肩の動きが悪くなり、関節が硬くなっていきます。腱板断裂は、重労働で重い物を持ち続けたり、転倒などの外傷で起こることもありますが、腱の老化によっていつの間にか切れていたということも少なくありません。どちらの疾患も、90%以上の人がリハビリによって症状が改善するといわれています。

どのような症状を訴えて受診される人が多いですか?

腱板断裂

腱板断裂

樋口 肩を動かすと痛い、腕が上がらない、と訴える人が多いですね。また、肩関節周囲炎、腱板断裂ともに、寝ている時に激しい痛みを感じる「夜間痛」が見られるのが特徴です。痛みで目が覚めて眠れなくなると、生活の質が著しく低下してしまいます。また、肩を動かせないことで「着替えができない」「髪が洗えない」「洗濯物が干せない」など、日常生活にも大きく支障をきたすことになります。
肩関節の場合、レントゲンに映らない筋肉や腱の損傷が痛みの主な原因となるため、レントゲン画像から得られる情報はあまり多くありません。そのため、誘発テストを行って痛みの出る動きや姿勢、痛みの出方を確認するとおおよその原因がわかりますので、その後にエコー検査やMRI検査で確認をして、診断をつけます。

どのような治療を行うのですか?

肩関節へのステロイド注射

肩関節へのステロイド注射

樋口 まずは、筋力トレーニングやストレッチといったリハビリを行います。肩の動きには胸の動きや股関節の動きも関わっているので、胸や股関節を評価し、必要に応じてそちらのリハビリも行っていきます。痛みが強い場合は、肩関節へのステロイド注射を併用して痛みを和らげます。何よりも、患者さん一人ひとりの状態に応じた適切なリハビリを行うことが重要です。肩関節周囲炎と腱板断裂では、90%以上の人がリハビリで痛みが軽減し、肩が動かせるようになるといわれています。ただし、リハビリなどの保存療法を3か月続けても痛みや動きが改善しない場合は、手術も選択肢のひとつとなります。

手術にはどのような種類があるのでしょう

従来の人工肩関節置換術

従来の人工肩関節置換術

樋口 関節鏡手術と人工肩関節置換術があります。
関節鏡手術は、肩関節に小さな穴を数か所あけて細い内視鏡や手術器具を挿入し、患部を確認しながら行う手術です。病変を詳細に観察することができるので、正常組織を傷つけず、損傷箇所をより適切な形で手術することができますし、傷痕も小さくてすみます。
しかし、関節鏡手術で腱板を修復することができないような腱板断裂には、人工肩関節置換術を検討します。従来の人工肩関節置換術は、腱板の機能が温存されていることが適応条件でしたが、2014年にリバース型人工関節の使用が認可され、腱板が機能していない患者さんにも人工肩関節置換術が行えるようになりました。

リバース型人工肩関節置換術について教えてください

リバース型人工肩関節置換術

リバース型人工肩関節置換術

樋口 従来の人工肩関節は、腱板が機能してないと、痛みは取れても動きを取り戻すことができなかったのですが、リバース型人工関節は、従来型に比べ骨頭と受け皿の位置を反転(リバース)することで、腱板がなくても健常に近い状態まで動きを改善することが期待できるようになりました。多くの場合、夜間痛は術後2~3日で改善しますが、動作時の痛みはその後のリハビリをしっかりと行うことで徐々に取れていきます。入院期間は一般的に1~2週間。その後は通院で3~6か月リハビリを行います。術後しばらくは腕を固定する必要がありますが、基本的に術後の日常生活に動作制限はありません。
なお、リバース型人工肩関節置換術には「70歳以上」「腱板が大きく断裂している」「肩が水平より上に上がらない」といった適応条件があります。また、日本では日本整形外科学会のガイドラインに規定された要件を満たす専門医だけがこの手術を行うことができます。

肩関節の痛みや動きの悪さに悩んでいる人へアドバイスをお願いします

樋口 直彦 先生

樋口 肩に違和感や痛みがあっても「四十肩・五十肩は放っておけば治るから」と思って放置している人も多いのではないでしょうか。確かに自然に治まる場合もありますが、適切な治療を行わないと悪化してしまうケースもあるのです。また、四十肩・五十肩だと思い込んでいても、腱板断裂や他の疾患が隠れていることもあります。大切なのは、様子を見ていい症例か、治療が必要な症例かを的確に見極めることであり、それには身体所見が非常に重要な役割を果たします。肩関節の場合、「レントゲンで異常がない」だけでは診断はつかないのです。
肩関節の疾患は、多くの場合リハビリでの改善が望めます。手術が必要になるのは全体の5%くらいです。治療後、痛みや動きが改善し、趣味やスポーツをなさっている人もたくさんおられます。まずは肩の専門医に相談し、ご自身の症状の原因を正しく調べてもらうことをお勧めします。


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