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専門医インタビュー

肩や膝の痛み 関節の状態を正しく把握して適切な治療を受けましょう

橋口 津 先生
  • はし ぐち しん 先生
  • 西能病院/整形外科センター西能クリニック 整形外科部長
  • 076-422-2211

富山県

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専門分野:関節外科、スポーツ障害、肩関節外科、骨軟部腫瘍治療
資格:日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定リウマチ医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、カターレ富山チームドクター

この記事の目次

特に中高年の女性に多く見られる肩や膝の痛み。「歳だから仕方がない」と我慢しがちですが、様子を見ているうちにますます悪化していくことも少なくありません。「肩や膝に違和感や痛みがあれば、まずは整形外科を受診して、自分の関節の状態を正しく把握しましょう。多くの場合、保存療法で改善が望めますよ」とアドバイスする西能病院の橋口津先生にお話をうかがいました。

肩関節に痛みが出る主な原因を教えてください

肩関節のしくみ

肩関節のしくみ

中高年に多く見られるのは、俗に四十肩・五十肩と呼ばれる「腱板炎(けんばんえん)」と、「腱板断裂(けんばんだんれつ)」です。腱板炎は、はっきりとした原因はわかっていませんが、例えばゴルフでダフったり、洗濯物を高いところに掛けるといったちょっとした動きが契機で腱板が炎症(えんしょう)を起こし、翌日には手が上げられないほどの痛みになることもあります。腱板断裂については、明らかな外傷(がいしょう)が肩に加わって断裂することもありますし、経年的に少しずつ変性していつの間にか擦り切れていることもあります。
一方、若年者の肩の痛みは、野球やサッカー、ラグビーといったスポーツによる外傷が原因になるものと、外傷のないものの二つに分かれます。外傷が原因の場合は、関節唇(かんせつしん)という軟骨(なんこつ)が損傷していることが多いです。外傷がないのに痛みが発生するケースは女性に多くみられ、もともと肩関節が柔らかく緩みが強いために、関節唇や腱(けん)がダメージを受けやすい傾向があります。ただし、若年者の痛みの90%以上はリハビリで改善するといわれています。

中高年の肩の痛みの場合、どのような症状があれば整形外科を受診したほうがいいのでしょう?

腱板断裂

腱板断裂

腱板炎、腱板断裂ともに、寝ている時に痛みを感じる「夜間痛(やかんつう)」が見られるのが特徴で、眠れないことで生活の質が落ちてしまいます。さらに痛みで肩が動かしにくいなど、日常生活に支障をきたすような症状が出た場合は、整形外科を受診することをお勧めします。治療は痛みの程度にもよりますが、まずは痛み止めの内服薬で様子をみます。それで効果がみられない時は関節内注射を、肩の硬さや動きに問題がある場合はリハビリを行います。早期に受診すれば痛み止めや注射だけで改善することもあり、痛みの長期化を防ぐことが可能です。また、症状が悪化した時に起こる拘縮(こうしゅく)を予防することにもなります。
腱板断裂は、症状が似ているため四十肩・五十肩として診断・治療されてしまうケースもありますが、本来は別の疾患(しっかん)です。四十肩・五十肩のように自然に症状が治まるということはありませんので、痛みが長引く場合は超音波やMRIで検査をして、診断をつける必要があります。

手術が必要になるのはどのような場合ですか?

腱板を縫合・修復する器具

腱板を縫合・修復する器具

痛み止め、関節内注射、リハビリといった保存療法を3カ月~6カ月続けても痛みや動きが改善しない腱板断裂の場合、40代~60代であれば関節鏡視下手術(かんせつきょうしかしゅじゅつ)で腱板を縫合します。関節鏡視下手術は、肩関節の周囲に1cmほどの小切開を4~5箇所あけ、そこに細いカメラ(内視鏡(ないしきょう))や手術器具を挿入し、患部を確認しながら行う手術です。傷口が小さく身体への負担が少ないため、術後の回復が早いのが特徴です。
しかし、70代~80代の腱板断裂では、腱板自体が弱くなっていることが多く、関節鏡で縫合しても再度切れてしまうリスクが高いため、人工肩関節置換術(じんこうかたかんせつちかんじゅつ)を検討することになります。従来の人工肩関節は、腱板の機能が温存されていないと効果が期待できませんでしたが、近年使用できるようになったリバース型人工肩関節を採用することで、腱板が機能していない患者さんにもこの手術が行えるようになりました。

リバース型人工肩関節置換術について教えてください

リバース型人工肩関節

リバース型人工肩関節

従来の人工肩関節では、腱板が機能していないと回転中心がずれ、腕の動きの改善や除痛にあまり効果が期待できませんでした。しかし、リバース型人工関節は、上腕骨(じょうわんこつ)側の骨頭(こっとう)と肩甲骨(けんこうこつ)側の受け皿の位置を逆にすることで、腱板がなくても健常に近い可動性や除痛効果が期待できるようになったのです。ただし、頻度は少ないですが従来の人工肩関節と同様に感染などの合併症があります。また、日本では、一定以上の手術経験があり、日本整形外科学会の定めた講習会を受講した専門医しか、この手術を行うことができません。


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