専門医インタビュー
東京都
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代表的な合併症に深部静脈血栓や感染症があります。深部静脈血栓は、脚にある深部静脈に血のかたまり(血栓)が形成される病気ですが、この血栓が肺に飛んでしまうと、肺動脈を塞ぐ肺塞栓症(エコノミークラス症候群)になることがあります。そのため、血栓を溶かす薬剤を使用したり、じっとしていると血栓のリスクが上がるため、手術後早期にリハビリを開始し血栓予防を行います。
手術後早期の感染症を予防する方法として、手術中は抗菌剤の入った糸を使用し、傷口は銀イオンの含まれているシートで覆うなどさまざまな対策がとられています。手術前や手術後は、血流に細菌が存在する状態(菌血症(きんけつしょう))をできるだけ少なくしていただきたいです。菌血症は虫歯など、歯科治療を行った際に歯茎(はぐき)などに存在している細菌が血流に入る場合があるので、虫歯の予防や虫歯になれば早期に適切な治療を受けるなどの対策をとるようにしてください。また、特に糖尿病の方は、感染症のリスクが上がりますので、手術前だけでなく手術後も血糖値をコントロールすることが大切になります。
手術後早期から過度な負荷は避けながら、可動域訓練や筋力訓練などのリハビリを行います。入院期間は一般に、片方の膝の手術では2~3週間、両膝を同時の場合は4週間くらいになり、杖を使ったり手すりを持ちながら階段昇降ができるようになるのが退院の目安です。日常生活に戻ってからは、人工関節を長持ちさせるために、飛んだり跳ねたりを繰り返し負荷のかかる運動、例えばマラソンのような激しいスポーツは避けていただいたほうが良いでしょう。ただし、水泳や自転車、エアロビクスやヨガ、ウォーキングなどは、リハビリの一環としても推奨され、卓球やボウリング、テニスのダブルス、ゴルフなどを行われている方もいます。
近年では、レントゲンやMRIなどの画像診断も進歩しており、細かい原因まで分かるようになっています。保存療法を経て手術となっても、手術方法が進歩してきたことで、骨切り術であれば自分の膝を温存し希望するスポーツを継続できる可能性があります。また、人工膝関節置換術も、以前よりも耐用年数が伸びているだけでなく、合併症対策や手術後の痛みの軽減方法が進み患者さんの満足度が向上しています。アンケートの結果では手術を受けた8割以上の方が膝痛に悩んでいる友人にも人工膝関節置換術手術を勧めたいという結果があります。
現在、変形性膝関節症には、保存療法や手術といった治療の中に多くの治療選択肢があります。膝に痛みがあれば、まずは、お近くの専門医にご相談ください。
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