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専門医インタビュー

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この記事の目次

股関節の痛みの原因として変形性股関節症が有名ですが、それ以外にもさまざまな疾患があります。その中には痛みの原因を特定することが難しい疾患もあり、股関節を専門にする医師に診断してもらう必要もあります。股関節外科・人工股関節を專門として、股関節疾患の治療に取り組まれている谷口先生に、変形性股関節症の治療法とともに、最近の人工股関節置換術について詳しくお話を伺いました。

変形性股関節症の原因として圧倒的に多い、寛骨臼形成不全について教えてください

寛骨臼形成不全

寛骨臼形成不全

股関節は太ももの骨の先端(大腿骨頭(だいたいこっとう))が、骨盤にある寛骨臼(かんこつきゅう)と呼ばれる受け皿にはまり込み構成されています。寛骨臼形成不全(かんこつきゅうけいせいふぜん)は、成長過程で寛骨臼の発育が不十分であり、受け皿である寛骨臼のかぶりが浅い状態です。骨盤の形状に問題のない人と比べて比較的早い時期から股関節の不安定性が生じ易く、股関節唇や軟骨が損傷して、股関節に痛みが出る変形性股関節症に至ることがあります。欧米人に比べて日本人女性に多くみられるのが特徴です。
寛骨臼形成不全は、人工股関節置換術を受ける方の4人に1人は遺伝性といわれています。つまり、自分の親と背格好が似るように、親に寛骨臼形成不全があると、お子さんにもそれが引き継がれる可能性があります。ですから、股関節周囲に痛みがあって、鎮痛薬を服用したり安静にしたりしていても改善しない場合や悪化しているような場合は、股関節専門医を受診することをお勧めします。

境界型の寛骨臼形成不全とはどのような状態なのでしょうか?

股関節の仕組み

寛骨臼形成不全があると、運動などの負荷により股関節は不安定になりやすいです。股関節の不安定性は、股関節唇(こかんせつしん)、滑膜(かつまく)や股関節包(こかんせつほう)といった軟部組織や股関節周囲の筋肉に炎症や損傷をきたし、股関節に痛みをおこすことがあります。典型的な寛骨臼形成不全であればX線画像で診断がつきやすいのですが、寛骨臼のかぶり具合が正常と形成不全の中間にあたる「境界型」の場合は、痛みの原因の診断が難しくなることがあります。境界型寛骨臼形成不全の場合、一般の整形外科ではX線画像検査以上の精査が難しく、股関節の痛みの原因が寛骨臼形状由来であると診断されないこともあり、軟骨が少しすり減り始めてからわかるというケースが少なくありません。

寛骨臼形成不全で行われる骨切り術とはどのような手術なのでしょうか?

骨切り術

骨切り術

骨切り術(寛骨臼移動術)は、寛骨臼形成不全で骨盤のかぶりが浅い寛骨の一部をくりぬいて、骨頭に対し十分な被覆が得られるように回転させる手術です。軟骨がまだ残っていて、股関節の関節面に変形が起きていないことが適応条件ですが、関節面の変形が進んでいても行える別の骨切り術もあります。骨切り術によって股関節にかかる荷重が分散され、痛みを感じている部分が移動すれば、痛みが出にくくなると考えられます。寛骨臼移動術は、関節軟骨が保たれている40歳代までに適応があると考えています。特に10代後半から20代前半で股関節の痛みにより、学業や仕事に支障が出たり、日常生活で困っているようなら、骨切り術は有効な選択肢だと思います。
ただし、骨切り術は、人工的に骨折を起こすようなものなので、患者さんの体への負担が大きな手術です。人工股関節の手術よりも治療期間が長くなります。年齢が高くなるほど筋力の回復や骨癒合(こつゆごう)も遅くなります。また、骨切り手術を行ったからといって一生自分の関節がもつ可能性が保証されるわけではなく、将来変形が生じ人工股関節置換術が適応となることもあります。さらに変形が始まっていると、骨切り術を行っても比較的術後早期に人工股関節置換術が必要となることがあります。


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