メニュー

専門医インタビュー

四十肩・五十肩と軽視せずに受診を 適切な診断と治療で機能回復を目指しましょう

鎌田 孝一 先生
  • 鎌田 孝一 先生
  • 河北総合病院 副院長 整形外科主任部長 手術部部長
  • 03-3339-2121

東京都

プロフィールを見る

日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本整形外科学会認定リウマチ医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本肩関節学会所属、順天堂大学整形外科・スポーツ診療科非常勤講師

この記事の目次

腕が上がらない、動かすと肩が痛むといった症状は、「四十肩、五十肩だから放っておけば治る」と軽視されることが少なくありません。でも、それは腱板断裂や変形性肩関節症かもしれません。痛みが続くようなら受診し、治療を進めることが大切です。河北総合病院の鎌田先生に、受診のタイミングや治療法についてうかがいました。

若年者や中高年の「肩の痛み」。原因にはどのようなものがありますか?

肩関節周囲炎

肩関節周囲炎

若年者で外傷歴(けがの経験)がある場合には脱臼、野球などをやっている人は投球障害肩などが考えられます。いずれにせよ、若い世代であれば外傷性であることがほとんどです。これが40歳、50歳代になると肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)、いわゆる四十肩・五十肩が主な病気になっていきます。
文字通り、肩関節の周囲の組織に炎症が起こる病態で、老化の始まりのサインともいえます。さらに60歳代になると、上腕骨(じょうわんこつ=腕の骨)と筋肉を接合している腱板(けんばん)が切れたり傷ついたりする「腱板断裂」が増えます。腱板断裂は若い人でも起こるのですが、その原因は外傷であることが多く、一方、高齢者の腱板断裂は老化がベースにあり、自然に切れてしまうことも少なくありません。肩関節周囲炎と腱板断裂は、動かしたときだけでなく夜間にも痛むという症状がよく似ていますが、手を伸ばしたときに力が抜ける感覚が強いと、腱板断裂の疑いが濃くなります。また、腱板断裂が進むと肩関節の軟骨がすり減って変形性肩関節症(へんけいせいかたかんせつしょう)に至るケースもあります。

若年者に多いスポーツ障害には、どのような治療がありますか?

関節唇

投球障害肩のメインとなる治療法はリハビリです。肩の筋肉や関節の動きが一定方向に制限されている状態から動かせる範囲(可動域)を広げたり、腱板の筋力を強化したりする運動を行います。このように、10~30代のスポーツ障害はリハビリで改善するケースが多いのです。ただし、肩関節の脱臼が癖になっている反復性肩関節脱臼(はんぷくせいかたかんせつだっきゅう)の場合は、関節唇(かんせつしん)という組織が損傷しているのを修復するために内視鏡を使った手術(肩関節鏡視下手術(かたかんせつきょうしかしゅじゅつ))が必要になることもあります。肩に1cmくらいの小さな穴を2、3箇所開けた状態で、アンカーと呼ばれる糸付きのビスを骨に入れ、脱臼により剥がれた関節唇を糸を使って縫合、修復します。アメフトやラグビー、柔道など激しいコンタクトスポーツの反復性肩関節脱臼だと、切開をともなう手術(直視下手術)も行われます。入院期間は一般的に5日間程度です。リハビリを経て、コンタクトスポーツと投球動作のあるスポーツ以外なら、3カ月くらいで復帰できることもありますが、コンタクトスポーツは復帰に6カ月くらいかかります。投球動作のあるスポーツは6カ月目から投げる練習を始め、復帰できるのが1年後くらいのイメージになります。

中高年に多い肩関節周囲炎と腱板断裂にはどのような治療がありますか?

ヒアルロン酸注射

ヒアルロン酸注射

肩関節周囲炎は、四十肩・五十肩だと思って「すぐ治る」と放っておくと、痛くて動かせないでいるうちに関節が固まって重症化、痛みが増してしまうことがあります。1週間経っても痛みが引かず、腕が上がらないようなら、整形外科へ受診されることをお勧めします。
治療としては、内服薬や湿布で痛みを抑えたり、肩関節に痛み止めやヒアルロン酸を注射したり、あるいは肩まわりの筋肉を動かしていくリハビリがあります。腱板断裂は診断された半分以上が、1年以内に断裂部分が拡大し、痛みも強くなるといわれています。そのため、まずは1~2カ月、リハビリや注射で経過を観察し、症状が変わらないようなら手術を検討します。手術は断裂した腱板を縫合するもので、現在の主流は肩関節鏡視下手術ですが、直視下手術で行われるケースもあります。70歳以上で、完全に腕が上がらないなど関節の変形が強くなると、傷んでいる部分を取り除き人工関節と入れ替える人工肩関節置換術という方法も選択肢となります。

健康な肩関節を維持するために生活の上で大切なことはなんですか?

腱板断裂

腱板断裂

肩関節周囲炎や腱板断裂は老化が始まったサインともいえます。老化を遅らせるためには、運動習慣が有効です。例えばラジオ体操は腕を上げ下げしますが、これは日常生活を送っているだけだと、あまりしない動きです。ウォーキングや水泳などの有酸素運動は、膝、太ももの筋力強化になります。こうしたラジオ体操、ウォーキング、水泳などを週に1、2回できると理想的だと思います。
運動を続けて関節の機能を維持することで、健康寿命を延ばせる可能性も高まります。肩甲骨や肩の動きが良い状態を、できるだけ長く保ちたいものですね。
しかし、痛みを押して無理に運動するのはいけません。1週間経っても痛みが取れなかったら医師に相談されることをお勧めします。


この記事の医師がいる
病院の詳細はこちら

ページの先頭へもどる

PageTop