専門医インタビュー
人工肩関節の一例
肩は膝や股関節のように体重がかかる部位ではないので、変形性肩関節症を発症する頻度は少ないのですが、腱板断裂や脱臼により誘引されることもあります。初期であれば保存療法としてリハビリや痛み止めの注射、薬の服用などで痛みを緩和します。しかし症状が改善せず、日常生活に支障が出る場合は手術を検討します。変形が強ければ、すり減った軟骨と傷んだ骨を切除し、人工関節と入れ替える「人工肩関節置換術」を行います。70歳以上の高齢者で、腱板断裂に伴う変形性肩関節症の場合は、切れた腱板に頼らずに改善を目指せる「リバース型人工肩関節置換術」が適応となります。
人工肩関節置換術とリバース型人工肩関節置換術
人工肩関節置換術は、腱板機能が回復しないと腕が上がりづらいのですが、肘をついたり立ち上がるときに手をついたりといった動作は可能です。また人工関節部分の耐用年数は20年ほどといわれており、高齢者の方なら経年劣化による再置換術が必要ない可能性が高いといえます。一方リバース型人工肩関節置換術は、肩側が丸く、腕側に受け皿がある、通常とは逆(リバース)のデザインをした人工関節を用いるのが特徴です。この形だと、腱板が切れていて機能していなくても腕が上がるようになります。一方で、肘をつく、手をついて立ち上がる動作は難しくなります。人工関節の耐用年数はやや短く、一般的に10~15年ほどです。それぞれに長所と短所があり、患者さんの状態に合わせて選択することになります。なおこれらの手術にも感染などのリスクをともないます。手術を受けるにあたり不安なことは事前に医師に相談するようにしましょう。また、手術後は健康な状態を維持するために定期的に検診を受けることが大切です。
肩関節の動きは食事や着替え、顔を洗うなど日常生活動作と直結していることが多く、そこに痛みや動きの制限が出てくると、毎日の暮らしの質が大きく落ちてしまいます。痛みの原因は患者さんの年齢や生活環境、行っているスポーツなどによってさまざまですから、四十肩・五十肩と決めつけず整形外科に相談されることをお勧めします。治療の選択肢を広げるという意味でも、ご自身の肩の状態を適切に診断してもらい、どのような治療法があるのか知ることが大切だと思います。
ページの先頭へもどる
PageTop