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専門医インタビュー

変形性股関節症の原因にあった適切な治療を受けましょう

この記事の専門医

加畑 多文 先生
  • 加畑 多文(かばた たもん) 先生
  • 金沢大学附属病院 准教授
  • 076-265-2000

石川県

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専門:股関節外科、人工関節、関節リウマチ
資格:日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会専門医

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この記事の目次

変形性股関節症の手術にはどのようなものがありますか?

骨切り術

骨切り術

人工股関節置換術の流れ

就寝時の夜間痛に悩まされている、痛みを我慢するのがつらくなってきた、日常生活においてやりたいことができなくなったなど、保存療法を行っても改善がみられないときは手術療法を検討します。ただし、変形性股関節症にはさまざま原因があるので、原因を明確にした上で手術方法を選択することが大事です。寛骨臼形成不全が原因で、骨の変形や軟骨が温存されている場合、股関節の骨を切り寛骨臼の被りをよくし股関節への荷重を分散させたり、また、大腿骨頭壊死症では、大腿骨の一部を切り大腿骨頭の角度を変更し、壊死している部位に接触が生まれないようにしたり荷重がかからないようにする骨切り術(こつきりじゅつ)が行われます。大腿骨寛骨臼インピンジメント症候群であれば、関節鏡視下手術という関節内に小さなカメラや手術器具を入れ、隆起している部位を切除し、大腿骨と寛骨臼が衝突を起こさないようにする手術が行われます。
ただし、骨切り術の場合、切った骨がなかなか癒合(ゆごう)しない、最終的に癒合しないといった合併症が生じる場合が稀ではありますが存在します。また股関節の変形が進行していたり、軟骨の損傷が激しかったりする場合は、骨切り術などの手術では改善が見込みにくいため、人工股関節置換術(じんこうこかんせつちかんじゅつ)の適用とされます。

人工股関節置換術とはどのような手術ですか?

前方アプローチと前外側アプローチと後方アプローチ

人工股関節置換術は日本では年間6~7万件おこなわれている一般的な手術ですが、股関節を温存できるのであれば、先述したような原因を取り除く手術方法を適用するのが一般的です。人工股関節置換術は最後の治療手段と考えられています。手術のアプローチにはさまざまな方法があり、股関節の状態により太ももの前方や外側から行われることがあります。この前外側アプローチで得られるメリットは、なんといっても筋肉や腱を温存できることです。筋腱を温存できると、回復が早くなるほか、縫合部の離開や人工股関節の脱臼の頻度が軽減されます。そのため「この動作をしてはいけない」「あの動作をしてはいけない」といった制限が少ないので、患者さんが日常生活などでの動作をあまり気にしなくて良いこともメリットだと思います。しかし、変形が強いなど難治な症例の場合、臀部の後方からのアプローチで行うと術野が広くとれるので人工股関節の設置がより円滑になるというメリットが得られます。

以前の人工股関節置換術とくらべてどんなところが進歩しましたか?

ポータブルナビゲーションシステム

ポータブルナビゲーションシステム

以前の人工関節手術では、どれくらい骨を削らないといけないか、どの位置に人工関節を設置すれば良いかという判断に術者の経験が求められる部分が多かったと思います。最近では、手術前の事前シミュレーションと、手術中にナビゲーションにもとづいて手術が行われるようになった点が進歩したもののひとつになると思います。事前のシミュレーションでは、患者さんの股関節の画像を3D解析し、どのくらいの可動域が改善できるか、どの人工関節が適切でどのように設置すれば良いかと患者さんひとりひとりにあった術前計画が立てられるようになり、手術前にどのような結果になるか予想を立てられるようになりました。手術中に使用するナビゲーションシステムは、事前のシュミレーション通りに、あと何ミリ骨を削らないといけないか、人工関節をどの位置に設置しないといけないかなどを手術中リアルタイムに検証できるので、高精度の手術が平準化して行えるようになっています。また近年ではより簡易的なポータブルナビゲーションを使用し、人工関節を正確に設置する方法も普及しています。その他に手術にともなう痛みの管理も進歩したと感じます。全身麻酔と硬膜外麻酔を併用することに加え、手術中に股関節周辺に痛み止めなどの薬を複数混ぜた注射(カクテル注射)を行い、手術後にはさまざまな痛み止めなどを内服することにより、手術当日や翌日に患者さんが手術の痛みをできるだけ感じない方法がとられています。筋肉や腱を切らない手術法や、いろいろな痛みをコントロールする方法で、以前と比べて手術にともなう極端な痛みを感じる方が少なくなってきました。


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