専門医インタビュー
従来は股関節の後方に切開を加え、後方の筋肉を大きく切開して股関節に到達する手術方法で行われてきました(後方アプローチ)。その場合、術後の脱臼を予防するために日常生活においてさまざまな行動に制限が必要でした。最近では、身体への負担を減らす低侵襲手術により、皮膚切開の長さが従来よりも短くなっただけでなく、手術中の出血量も軽減できるようになっています。また太ももの前側から切開する「前方アプローチ」で手術を行うと、筋肉や腱を切らずに人工関節を設置できることから脱臼を起こしにくく、日常生活上も特に動作制限する必要はありません。また、筋肉や腱を温存できるので社会復帰が早く、仰臥位前方進入法(ぎょうがいぜんぽうしんにゅうほう)(DAA:Direct Anterior Approach)という仰向けに寝た状態で手術を行えば、術中に透視撮影で確認しながら正確に人工関節が設置されているか確認でき、骨盤の位置が安定しているので脚の長さを左右そろえやすくなるなどの利点があります。
両方の股関節に手術が必要な場合、痛い思いを二度したくないので一度で手術を終わらせたいと思う方がいると思います。そのような場合、一度に両側の手術を受けられる体力があるかなど全身をしっかりチェックした上で、両股関節を同時に手術することが可能です。手術や入院、リハビリが一度ですむこともあり、最近は高齢の方でも同時手術を希望することが増えてきました。また両脚の人工関節置換術を一度に行うと、左右の足の長さをそろえやすいという利点もあります。
人工股関節の一例
人工軟骨であるポリエチレンが摩耗すると骨に摩耗粉が取り込まれ、人工関節周囲の骨が溶けて隙間が生じることで人工関節がグラグラとゆるんでしまうことがあります。そのような場合に人工関節を入れ替える手術(再置換術)が必要になります。骨や人工関節の状態によっては、骨移植が必要となるなど初回の手術よりも時間がかかり、手術自体の難易度が上がります。しかし早い段階で気づくことができれば、人工関節の一部の交換だけで済む場合もあります。ポリエチレンの摩耗により骨が溶けてきた初期の状態は、レントゲンで隙間を確認できても痛みなどの自覚症状はありませんので、定期的な診察とレントゲンチェックを受けることが大切です。
最近の人工関節は素材が向上し耐久性が延びていますが、どんなに調子が良くても年に1回は人工関節の健康診断を受けるつもりで定期的に受診するようにし、気になることがあれば医師に相談するようにしてください。
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