専門医インタビュー
岩瀬 人工膝関節の手術直後の痛みは、手術の内容によっても違ってくることがあります。例えば、人工膝関節を設置するときに、O脚変形が強い場合は膝関節の内側の組織を剥がしたりすることがあります。手術直後の痛みは、このような処置とも関係するのではないかと考えられています。近年は、手術の技術や機械の進歩に伴い、可能な限り、組織を剥がしたりしないで人工膝関節を設置することが可能になってきています。そうした取組で、術後の痛みの軽減に取り組んでいる医療施設もあります。
相川 体にメスを入れ、骨を切るわけですから、術後2、3日はどうしても痛むことがあります。それでも、昔に比べると術後の疼痛コントロールは進歩しています。坐骨神経(ざこつしんけい)ブロックやカクテル注射などで痛みを抑え、術後のリハビリがスムーズに進むよう支援している医療施設が大半だと思います。
相川 注意が必要なのは感染症です。血流に乗って細菌が人工関節に付着すると、入れ替えの手術が必要になってしまいます。この感染症は、手術直後だけでなく、術後10年以上経っても起こる可能性があります。例えば、化膿しやすい糖尿病の人は、手術前、手術後を通じて血糖値コントロールを徹底する必要があります。また、転倒したり、跳んだり跳ねたりすることで人工関節の破損や骨折のリスクが高まるので、その点も注意が必要です。
岩瀬 感染症については、関節リウマチや人工透析を受けている人も注意が必要です。ただし、術後の感染症は、患者さん自身で予防することができます。むし歯や歯周病、水虫などの治療をしっかり行い、切り傷が化膿しないよう気をつけるといったことで防げることもあると考えます。それに加えて、何か問題が起きたとしても早期発見・早期治療ができるよう、定期検診を欠かさずに受けることも大切です。
相川 医師のほうから、何が何でも手術をしたほうがいいと強く勧めるようなことはまずありません。しかし、いずれ手術を受けることになるのなら、タイミングを逃さないほうが患者さん自身にとってメリットが高いと思います。そのためには、まずは的確な診断を受けることが大切です。ご自分の人生で何をしたいのかを考えて、適切な治療を選んでください。
岩瀬 膝の痛みの原因はいろいろあります。治療を始めるタイミングが早いほど、治療の選択肢は多くなります。安静にしていても痛いとか、痛みが長引くようなら早めに整形外科を受診してください。整形外科の治療は、基本的に患者さんの要望に沿った方法で行われます。がまんして悪化させてしまう前に、日常生活で困っていること、できるようになりたいことを整形外科医に話していただきたいと思います。
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