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専門医インタビュー

肩が痛い、腕が挙がらない 広範囲腱板断裂を治療するリバース型人工肩関節をご存知でしょうか?

この記事の専門医

五嶋 謙一 先生

石川県

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専門分野:膝・肩関節、スポーツ整形
所属学会:日本整形外科学会 専門医、日本肩関節学会、日本人工関節学会 認定医、日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS)評議員、日本整形外科スポーツ医学会代議員、日本knee osteotomy and joint preservation研究会 幹事、日本 Knee osteotomy フォーラム世話人

この記事の目次

腱板断裂の治療法について教えてください

ステロイド注射

ステロイド注射

転倒などの外傷で断裂した場合、腱が退縮しやすいので早めに手術をしたほうがいいでしょう。腱板の断裂部が自然に治ることはありませんが、加齢によって自然に擦切れてしまった場合、多くはリハビリなどの治療によって数カ月の外来通院で症状が軽くなります。リハビリは、肩の動きを保つために可動域の訓練や、周囲の筋力トレーニングをして肩関節のバランスを改善して肩が挙がりやすい状態を目指します。また痛みや炎症をおさえるために、関節内に局所麻酔剤やステロイドを注射することがあります(肩峰下滑液包注射(けんぽうかかつえきほうちゅうしゃ))。このような治療を行うことで8割くらいの方は症状が改善します。しかし症状が改善しても中には断裂が進行する場合があります。特に肉体労働をされている方やスポーツを行われている方、活動性の高い60歳以下で利き手側の腱板が断裂している方の場合は注意が必要ですので、定期的な経過観察が必要です。2~3カ月治療を行っても、肩が痛む、腕が挙がらないために自分のしたいことができず、日常生活に支障を感じるようでしたら手術を考えるタイミングです。

腱板断裂に対して行われる縫合術や再建術とはどのような手術でしょうか?

腱板縫合

腱板縫合

鏡視下手術といって、肩に1cm弱の小さな穴を数ケ所開け、そこからカメラ(関節鏡)や手術器具を挿入し、縫合糸つきの固定具(スーチャーアンカー)を骨に埋め込み、断裂している腱板を縫合する手術が行われています。しかし断裂が広範囲に及んでいる場合、縫合することは難しく、太ももの筋肉を包み込んでいる膜(大腿筋膜(だいたいきんまく))を用い、鏡視下手術で再建する方法がとられる場合もあります。

全人工肩関節置換術とリバース型人工肩関節の違いを教えてください

人工肩関節置換術(左)とリバース型人工肩関節置換術(右)

人工肩関節置換術(左)とリバース型人工肩関節置換術(右)

現在も行われている全人工肩関節置換術(ぜんじんこうかたかんせつちかんじゅつ)は、変形性肩関節症や関節リウマチ、上腕骨頭壊死(じょうわんこっとうえし)などによって肩の関節が破壊され痛みを伴う場合に、損傷している部分を取り除き人工関節に置き換える手術です。ただし腱板断裂がなく、腱板が機能していることが適応条件です。
一方、腱板が広範囲に断裂している腱板断裂性肩関節症に対してはリバース型(反転型)の人工関節が適応となります。従来の全人工肩関節置換術で使用される人工関節は、肩の解剖に似て上腕骨側は丸みを帯びた形で受け皿となる肩甲骨側の関節窩(かんせつか)側はくぼんだ形状なのです。しかしリバース型人工関節は、上腕骨側と受け皿の構造が反対になっているためにリバース型(反転型)人工関節と呼ばれています。というのも通常、腕を挙げる場合は腱板の力と三角筋の力が必要になるのですが、構造を反転させたリバース型人工関節では腱板が断裂していても三角筋の力のみで腕を挙げられます。そのため高齢者で腱板修復不能な関節症例に使用でき、最近では上腕骨の粉砕骨折も適応となっています。


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