専門医インタビュー
静岡県
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ヒアルロン酸注射
O脚変形がない初期の方には、ヒアルロン酸注射を行い痛みや腫れの状態が落ち着いた段階で筋力トレーニングを開始します。高齢の方は筋肉がつきにくいと思われがちですが、95歳でもトレーニングを継続し筋力がつくことで痛みがなくなった方もいます。歳だからとあきらめることはありません。筋肉は膝のサポーターだと思ってください。筋力トレーニングを続けることで膝が安定し、手術を回避できる方も多くいらっしゃいます。たとえ手術となっても、筋力をつけることは術後の機能回復にとても大切です。
膝を支える太ももにある大腿四頭筋(だいたいしとうきん)を中心に筋力トレーニングを行いますが、その中でも特に内側広筋(ないそくこうきん)と呼ばれる膝の上にある太もも内側の筋肉をきたえることが重要です。変形性膝関節症が進行すると、O脚変形とともに大腿骨(太ももの骨)が外に向くとされています。大腿骨が外を向かないようするためにも、内側広筋をきたえる必要があります。
自宅で内側広筋をきたえる方法としては、膝を伸ばした状態で、膝の下にタオルやペットボトルをいれてつぶす運動があります。その際、足のつま先が外側を向いていると内側広筋に力が入らないので、つま先を内側に向け内側広筋に力が入っていることを意識してトレーニングするようにしましょう。
筋力トレーニングなどのリハビリを自己流で行うと、かえって悪くなる場合があります。病院で医師や理学療法士などから指導を是非受けてみて下さい。正しいトレーニングを行うことができると思います。また、筋力を評価することは筋力トレーニングのモチベーション維持に役立ちます。
内側広筋を鍛える運動
変形性膝関節症の患者さんの場合、どうしても膝だけに着目されがちです。しかし、二足歩行である人間は、脊椎、骨盤、下肢がお互いにバランスを保ちながら姿勢を保持します。そのため腰が曲がると、身体全体のバランスを維持しようとして、膝を曲げて立つ姿勢になりがちです。膝を曲げて立つ姿勢は膝周囲の筋肉への負担が大きいため、膝関節が不安定になり、軟骨が損傷して変形性膝関節症になる可能性があります。また、変形性膝関節症の患者さんに手術を行い、膝が完全に伸びるようになったとしても、腰が曲がった方は膝を曲げて立たなければならず、だんだん膝が伸びなくなってきます。
変形性膝関節症の患者さんにおいても、良好な姿勢を保持することは非常に重要です。良好な姿勢を保つためには、腹筋、背筋などの背骨の周りの筋力トレーニングが重要になります。同時に、背骨の曲がる原因になる骨折を予防するため、骨粗しょう症の評価や治療も必要です。
レントゲン画像で変形が進んでいるからといって手術を受ける必要はありません。医師も無理矢理に手術を勧めるわけではありません。膝の痛みで日常生活に支障がある、旅行に行っても周りの方と同じスピードで歩けない、スポーツ活動が満足にできないなど、困っている内容は人によって違います。手術以外の様々な治療を行っても痛みが改善せず、手術によって困っている内容を改善できるとご自身が思った時が手術を受けるタイミングではないかと思います。
代表的な手術には、骨を切って荷重がかかる部分を(主に内側から外側へ)変える骨(こつ)切り術、膝関節の一部を人工関節に置き換える人工膝関節部分置換術(ちかんじゅつ)、膝関節をすべて人工関節に置き換える人工膝関節全置換術があります。骨切り術は骨を切る、つまり骨折させる手術なので、術後に骨癒合(骨がくっつくこと)が十分に可能だと思われる比較的若い方が対象となります。ただし、骨癒合まで時間がかかるので治療期間が長くなります。人工膝関節部分置換術はO脚変形が少ない高齢の方、それ以外の方は人工膝関節全置換術が対象になります。
膝の痛みに対し自己流で治療している方もいらっしゃるのではないでしょうか。病院に行くのは面倒かもしれませんが、まずはご自身の状態がどのようになっているか正確に理解することが大切です。ご自身の状態を知ったうえで、どのような治療方法を選択したらよいかを考えて下さい。変形性膝関節症と診断されたからといって、すぐに手術というわけではなく、効果的な筋力トレーニングを行うことで多くの方が手術を回避できています。歳だからとあきらめることなく、いくつになっても良好な姿勢を維持し、筋肉をきたえていくことはとても大切です。
まずは何が痛みの原因なのかを知るために、お気軽に専門医にご相談ください。
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