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専門医インタビュー

加齢とともに進行する変形性膝関節症は早めの受診で納得のいく治療を

この記事の専門医

上野 健太郎 先生

大阪府

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2011年大阪市立大学医学部卒業
日本整形外科学会専門医

この記事の目次

人工膝関節置換術とはどのような手術なのでしょうか?

膝関節の痛んだ部分を除去し、人工関節に置き換える手術です。膝の前面を縦に切開し、太ももの骨(大腿骨(だいたいこつ))と、すねの骨(脛骨(けいこつ))の傷んでいる部分を、それぞれの表面1センチぐらい切除して、そこに金属やポリエチレンでできた人工関節を設置するというものです。
膝関節は動きの多い関節です。かつては、人工関節で軟骨や半月板の代わりになるポリエチレンの摩耗が激しく、耐久年数にかなり制限がありました。ところが、現在では、ビタミンEの添加や放射線を照射するなどの工夫で摩耗しにくくなっており、耐用性が向上しています。人工関節の進歩だけでなく、手術方法も進歩しています。手術前にレントゲンやCTの画像を使って、使用する人工関節の大きさや設置する場所などの計画をしっかり立てます。さらに手術中は、術前計画通りに正確な角度で骨が切れるように簡易ナビゲーションシステムを使用し、精度の高い手術が行えるようになっています。このように人工関節や手術方法が進歩したおかげで、これまで以上の耐用性が期待されているだけでなく、機能面での向上も期待されています。

簡易ナビゲーションシステム

簡易ナビゲーションシステム

全置換術の流れ

全置換術の流れ

手術にともなう痛みや身体の負担はかなりあるのでしょうか?

手術支援ロボット

人工膝関節の一例

多くの方は「手術をする」というだけで気が重いでしょうし、まして膝の骨を切るとなると痛みに対する不安感を感じると思います。手術後の痛みについては、それを抑える薬や方法がいくつか考案されています。術後に神経ブロックのチューブを留置する方法や、手術中に痛みや炎症を抑える薬を複数混ぜたものを膝周囲に注射する方法が有効です。また、痛み止めの種類も増えているので、術後はそれらを効果的に組合せて痛みを和らげるよう努力しています。このように色々な方法を組み合わせることで、一昔前に比べて術後の痛みは大きく軽減しています。手術翌日あるいは2日目から歩行練習を開始しており、長期間のベッド上安静は必要ありません。

両膝とも同じくらい進行している場合、両膝とも同時に手術を受けられるのでしょうか?

正常な膝とO脚

人工関節を受けるほど変形や痛みの強い方の場合、反対側の膝も同程度に進行していることが多いです。そのように両膝とも痛みがある場合には、手術前検査で大きな問題がなく、両側同日手術の希望があれば、施行は可能です。手術時間は2倍になりますが、一回の入院で済みますので、時間的、経済的に合理的です。入院期間は片膝の場合とあまり変わりません。特に変形が強い方は、一度に手術を済ませたほうが両脚のバランスが揃い、リハビリがスムーズに進むかもしれません。

手術のリスクや、懸念事項などはありますか?

特に気を付けるのは、人工関節周囲の感染症です。確率は低いものの、糖尿病などの持病があるとリスクが上がり、感染症の状態によっては人工関節の再手術が必要になることもあります。手術中や入院中だけでなく、退院して5年、10年たってからでも発症する可能性があるので、十分に気をつけてほしい合併症です。糖尿病のある方は血糖値のコントロールを厳密にする必要があります。関節リウマチや膠原病などで、免疫を抑えるような薬を使っている人も注意が必要です。水虫や皮膚の病気もしっかり治療する必要があります。また、口腔内の衛生状態も大切です。抜歯のように出血を伴う歯科治療をする場合は「人工関節が入っている」ことをきちんと伝え、抗生剤を服用するなど十分に感染症対策に努めてほしいと思います。


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