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専門医インタビュー

広く浸透する人工膝関節置換術 「歳だから」と諦めず膝関節の専門医に相談を

瀬川 博之 先生
  • 瀬川 博之 先生
  • 新潟市民病院 整形外科部長
    新潟大学医学部医学科臨床准教授
  • 025-281-5151

新潟県

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日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会認定スポーツドクター、日本整形外科学会運動器リハビリテーション医、日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会評議委員

この記事の目次

日本では40年以上前から行われている人工膝関節置換術。患者さんの意識の変化や高齢化に伴い、手術件数は年々増加し、今では年間11万例以上行われています。しかし、手術に不安を感じる方も多いでしょう。新潟市民病院の整形外科部長 瀬川博之先生に、手術の内容や受けるメリット、退院後の生活などについてお聞きしました。

膝が痛む原因や症状にはどのようなものがありますか?

正常な膝と変形性膝関節症(進行期)

中高年の方の膝痛の原因として、最も多いのは「変形性膝関節症」です。年齢的な変化により膝の軟骨がすり減り、膝関節の動きが悪くなると、炎症を起こして痛みが出てきます。肥満や運動不足などの生活習慣が関係し、日本人はO脚の方が多いので、膝の内側の軟骨がすり減る方が多いです。男性よりも筋力の弱い高齢女性に比較的多く見られます。症状が進むと、膝の曲げ伸ばしや立ち上がり、階段の昇り降りで痛みを感じ、正座も難しくなります。さらに炎症が強まると、膝関節に水がたまって腫れることがあり、炎症が強い場所を押すと痛みを感じるようになります。

どのようなタイミングで整形外科を受診すべきですか?

体重を適正範囲にコントロール

膝が痛くても、しばらく安静にしていれば改善し、仕事や趣味に差し支えなければ様子を見ても良いでしょう。その場合は、体重を適正範囲にコントロールし、脚の筋力が落ちないよう適度な運動をして膝への負担を軽減することが大切です。しかし、痛みによって日常生活に差し支えるようになったら、早めに整形外科や膝関節の専門医を受診したほうが良いと思います。

変形性膝関節症と診断された場合、手術以外の治療方法はありますか?

足底板

足底板

症状が初期の場合は、減量や筋力トレーニングに加え、膝関節を保護するサポーターを装着します。O脚を補正する「足底板(そくていばん)」という装具をオーダーメイドで作り、靴の中に入れて膝内側の負担を減らす方法もあります。その他に、痛み止め薬や湿布を使用する場合や、痛みが強い場合は、関節の滑りを助けるヒアルロン酸を関節に注射することがあります。ただし、軟骨が元に戻るわけではないので、症状が進行した方にはあまり効果は期待できません。大腿四頭筋(だいたいしとうきん)という膝の前側にある大きな筋肉は、膝を支える重要な役割があります。ご自宅でできる簡単で効果的なトレーニング方法として、仰向けで横になり、丸めたバスタオルを膝の下に置き、膝の裏でタオルをしっかり5秒間押し込むことを10回行います。その他に、椅子に腰掛け、片脚を上げて膝の裏を伸ばし、5秒静止して戻す、これを左右10回ずつ行う方法も効果的です。痛みが強くなると膝が伸び切らなくなります。膝を曲げて歩くのは大腿四頭筋に非常に負担がかかります。長座りの状態から両手で膝の上を押さえ、膝の裏を伸ばすストレッチを毎日10回ほど行いましょう。食後など、時間を決めると習慣化しやすいと思います。

椅子に腰掛け、片脚を上げて膝の裏を伸ばし、5秒静止して戻す

手術を受けるのは不安があります

「手術を受けるとかえって歩いたり座ったりできなくなるのでは」「人工物を身体に入れることに抵抗がある」と、手術に対して心配される方もおられます。しかし手術後は「楽に歩けるようになった」「歩く格好が良くなったと言われた」「早く手術を受ければよかった」という声をいただくことが多いです。手術を引き延ばしたとしても、変形性膝関節症がすぐに悪化するということはありません。しかし、それにより痛みを我慢する期間が長くなり、健康寿命に影響を与えることがあります。膝の痛みのためにご自分のやりたいことができなくなったら、手術を考えたほうが良いかもしれません。


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